2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20059036
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
田中 元雅 The Institute of Physical and Chemical Research, 田中研究ユニット, ユニットリーダー (40321781)
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Keywords | プリオン / アミロイド |
Research Abstract |
プリオン病は神経変性疾患の一つであり、近年のウシからヒトヘのプリオン感染は我々に脅威を与えている。したがって、プリオン病の病態解明は重要な研究課題である。プリオン凝集体の形成機構については比較的よく研究されているが、その伝搬機構にはいまだ不明な点が多い。本研究では、取り扱いに優れ、これまでにプリオン現象の解明に多大な貢献をしてきている酵母プリオン[PS1^+]の系を用いて、プリオンの伝搬分子機構を解明することを目的とする。 遺伝学的スクリーニングなどにより、プリオンの伝搬に影響を与える遺伝子を複数同定した。それら遺伝子破壊株では、プリオンの伝搬が促進され、プリオン状態を野生型に戻すことがより困難になることが明らかになった。しかし、これら遺伝子破壊株では、新規なプリオン形成の効率に関しては野生株と大きくは違わなかったため、これら遺伝子がプリオンを母細胞に留めておくのに重要な働きをしていることが示唆された。一方、新規なプリオン形成時に、プリオン株の表現型を変化させる遺伝子破壊株も新たに同定した。この結果は、プリオン伝搬に関与する遺伝子が、実はプリオン株の表現型の決定にも重要な役割を果たしていることを示唆する。 酵母の老化に伴い、酸化された蛋白質は母細胞に選択的に留められることがこれまでに明らかになっている。しかし、酵母プリオンの凝集体が存在することで、酵母の老化が遅くなっていることを見出した。この結果は、酵母プリオンが、ある種の"機能性アミロイド"として、酵母の生存に寄与していることを示唆しており、今後、その分子機構を明らかにしていく予定である。
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