2008 Fiscal Year Annual Research Report
C型肝炎ウイルスの免疫寛容獲得及びその破綻による慢性炎症
Project/Area Number |
20060037
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Organization for Medical Research |
Principal Investigator |
小原 道法 Tokyo Metropolitan Organization for Medical Research, 東京都臨床医学総合研究所, 参事研究員 (10250218)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
関口 敏 財団法人東京都医学研究機構, 東京都臨床医学総合研究所, 研究院 (10462780)
平田 雄一 財団法人東京都医学研究機構, 東京都臨床医学総合研究所, 研究院 (50439452)
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Keywords | C型肝炎ウイルス / 持続感染 / 免疫寛容 / 慢性炎症 / 加齢 |
Research Abstract |
C型肝炎ウイルス(HCV)は感染後、高率に持続感染化し、慢性肝炎を発症する。HCV感染ヒト肝臓組織ではHCVが持続的に複製し、特異的細胞障害性T細胞(CTL)が誘導されているにも関わらず、ウイルス感染細胞が完全には排除されないことが知られている。このことから持続感染が成立する理由の一つとしてHCVに対して宿主側が免疫寛容状態になっていることが推測される。これまでHCVの病原性発現機序を解析するためにHCVのcDNAを組み込んだトランスジェニックマウスの開発が行われてきたが、HCV遺伝子が導入されたマウスは出生時からすでにHCV蛋白の発現があるために免疫寛容状態となり、宿主の免疫反応の解析が困難であった。そこで我々は任意の時期にHCV遺伝子をスイッチング発現するトランスジェニックマウスを作製し、その病態解析を行った。 Cre/loxPシステムでHCV遺伝子を導入したトランスジェニック(Cre/loxP/HCV-Tg)マウスと、IFN誘導性のCreを発現するトランスジェニック(Mx-Cre-Tg)マウスを交配させることにより、任意の時期にHCV遺伝子をスイッチング発現するトランスジェニック(Cre/loxP/HCV-MxCreTg)マウスを作製し、マウスの肝臓におけるHCV蛋白の定量と、形態学的および免疫学的検索を行った。 Cre/loxP/HCV-MxCreTgマウスの肝臓におけるHCV蛋白は完全に排除されることなく、1年以上の持続的な発現が確認され、肝臓における炎症や脂肪変性、線維化等の慢性肝炎の病態を示した。さらに、免疫抑制分子であるPD-1、PD-L1 、CTLA-4およびFoxP3の肝臓内におけるmRNAの発現を検索したところ、慢性肝炎状態ではそれぞれ発現量の低下が認められた。 Cre/1oxP/HCV-MxCreTgマウスは正常な免疫応答下で持続的にHCV蛋白を発現させることができ、慢性肝炎を発症させることができるHCV持続感染モデルとして非常に有用であった。さらに、慢性肝炎状態における宿主免疫反応の解析から、新たな免疫寛容獲得メカニズムによる可能性が示唆され、解析を進めている。
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