2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20200023
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Research Institution | Akita Prefectural University |
Principal Investigator |
川島 洋人 秋田県立大学, システム科学技術学部, 助教 (60381331)
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Keywords | 残留農薬 / 安定同位体比 / 鑑識学 / 環境動態析 / GC/C/IRMS / 個別化合物安定同立体比 / 炭素安定同立体 / 食品 |
Research Abstract |
平成21年度は実際の農薬類中の炭素安定同位体比の測定を行ったが,中国産冷凍鮫子問題で話題になったメタミドボスについては困難を極めた。22年度においては,メタミドホス中の高精度の分析法の開発を第一に目指した。まず,酸化炉に充填されている酸化剤(酸化銅等)を既往のものから変更し,白金等の触媒が混入している酸化剤を使った新たな酸化炉を作成した。その結果,高精度分析が可能になり,また数百回の分析においても安定した結果が得られた。結果は,繰り返し分析の標準偏差で0.2‰以下でメタミドボスをGC/C/IRMSにて測定することが出来るようになった。またクライオフォーカスも実施することで,低濃度領域においても高精度分析が可能となり,数倍の感度の上昇が可能になった。なお,メタミドホス以外のいくつかの農薬類ではさらに感度の大幅な上昇が得られた。 最終的には,国内で入手できるメタミドボス(7種)の炭素安定同位体比の結果は,-46.26‰から-32.6‰と幅広い値を取ることがわかった。また中国産のメタミドボス農薬(MTD600)は,-45.02‰となり,国内で入手可能なメタミドボス1種と近い値を取ることがわかった。 もし中国産のメタミドホス農薬が鮫子事件で使用されていたとすれば,冷凍鮫子のメタミドホスは-45‰付近となるはずであるし,さらにその場合の原因が国内起源と仮定すれば,国内で入手できるメタミドボス1種の流通経路を調べること(農薬類は国内ではすべて管理されている)で犯人の推定が可能である。農薬類の安定同位体比の研究は過去行われた事例は非常に少ないが,様々な前処理等を徹底的に見直すことで,高精度測定が可能であることがわかった。今後,食品の流通はさらに活発になることは容易に予測され,またそれに付随して国内外で安全意識は高まっていくことから,本研究の知見は国内に留まらず,欧米やアジア諸国にとっても重要なものになることが期待される。
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