2010 Fiscal Year Annual Research Report
逸脱を吸収する社会実現に向けたコミュニケーションギャップ生成-解消機構の解明
Project/Area Number |
20200043
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Research Institution | Tokyo University of Technology |
Principal Investigator |
榎本 美香 東京工科大学, メディア学部, 助教 (10454141)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡本 雅史 成蹊大学, 理工学部, 共同研究員 (30424310)
串田 秀也 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (70214947)
山川 百合子 茨城県立医療大学, 保健医療学部, 講師 (40381420)
松嶋 健 京都大学, 人文科学研究所, 研究員 (40580882)
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Keywords | コミュニケーション / 逸脱 / 統合失調症 / 高次脳機能障害 / メタ認知 / 認知障害 / インタラクション / 会話分析 |
Research Abstract |
本研究では,統合失調症や高次脳機能障害という病名が与えられた人々(theCommunication Handicapped;CH)が個々に持つ社会的・個人的属性や会話の個々の構成物(発話や身振り)の相互作用が作り出すコミュニケーションシステムにおいて,コミュニケーションギャップが検出され,排除/吸収されていく過程のメカニズムとして以下の3つを解明した。 1.コミュニケーションギャップを解消するための会話運用上の規範 -発話の聞き取りや理解の困難さによって生じたコミュニケーションギャップは、その直後に会話参与者全員の問題として取り上げられ、全員の協力によって解消され得ることを示した。 -患者の「援助を求めること」と「分別ある患者であること」との葛藤、医師の「患者を見捨てないこと」と「援助の限界を知らせること」との葛藤の過程を明らかにした。 2.コミュニケーションギャップを解消する認知メカニズム -会話の中で聞き取りや理解ができなかった聞き手は、自己の認知状態をその場で参与者全員にディスプレイすることで、互いの認知の食い違いが<やりとり>を通じて解消してくことを示した。 3.コミュニケーションギャップの生成から解消に至るメタ認知メカニズム -リフレーミング(他者の発話を言い換えたり情報を付加すること)が高次脳機能障害者に見られないことから、理解を自己のものとする深いレベルのメタ認知的過程が存在することを示した。 -ある「状況」を個人の「病気」の問題としてではなく、当該の人や関係性の危機として捉えることが、新たな関係性を創出するというメタ=コミュニケーションの枠組みを示した。 またこれらの知見を、精神科デイケアリハビリテーション実践、アウトリーチ支援としての訪問看護・就労相談などの実践にフィードバックした。
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Research Products
(30 results)