2009 Fiscal Year Annual Research Report
コウモリのバイオ・ナビゲーション機構の解明とその工学的応用
Project/Area Number |
20200055
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
飛龍 志津子 Doshisha University, 生命医科学部, 助教 (70449510)
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Keywords | 生物ソナー / 超音波 / テレメトリ / 動物神経行動学 / 音響計測 / バイオミメティック |
Research Abstract |
1.4種類のコウモリ(キクガシラコウモリ,アブラコウモリ,ユビナガコウモリ,モモジロコウモリ)に対して,発声と羽ばたきのタイミングを調べた.ユビナガコウモリを除く3種類のコウモリは,発声と羽ばたきに明確な同期が確認できた.特に,数十msの長いCF音を発声するキクガシラコウモリは,飛翔筋が最も活動するダウンストロークからアップストロークへの変化するタイミングで,パルス音圧の上昇やパルス長の伸長が見られた.これより,エコーロケーションと飛行制御の両者に,エネルギー消費やタイミングのバランスによってもたらされる相乗効果をコウモリが上手く利用していることが示唆された. 2.キクガシラコウモリが飛翔昆虫を探索し捕獲する際の飛行軌跡と超音波の計測を行なった.コウモリが獲物へのアタック直前にパルス長を100ms程度にまで伸長させていることを確認した.またコウモリの頭部に搭載した小型テレメトリマイクロホンによって,飛翔昆虫からのエコーの記録に成功し,コウモリが昆虫の羽ばたきによって生じる周波数変調を知覚の手がかりにしていること,パルス長の伸長は昆虫の羽ばたき情報を繰り返し取得するのに有効であることを明らかにした.またマイクロホンアレイを用いることで,獲物を追跡するコウモリの飛行軌跡とパルス放射方向のデータを取得することができた.両者の関係について今後,定量的な検討を進める予定である. 3.複雑に障害物が存在する環境下での混信回避行動を調べた.オオクビワコウモリはパルス発声毎にFM音の帯域を上下に数KHzずらすことで,自らのエコー列同士の混信を回避していることがわかった.また複数のコウモリが同時に飛行する場合での混信回避行動についても,テレメトリによる音響計測を実施し,たとえばキクガシラコウモリではこれまで考えられていたような個体間での周波数のシフトは行なっていないことが示唆された.
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Research Products
(17 results)