2010 Fiscal Year Annual Research Report
人工ウイルス合成に向けたヒト完全再構成型翻訳システムの開発
Project/Area Number |
20200056
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
今高 寛晃 兵庫県立大学, 大学院・工学研究科, 教授 (50201942)
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Keywords | 再構成 / タンパク質合成 / RNAウイルス / 人工ウイルス / 試験管内合成 / 脳心筋炎ウイルス / 翻訳 / RNA合成 |
Research Abstract |
1.再構成翻訳糸の樹立、2.セルフリー系でのRNAウイルス合成に分けて研究を行い、3.再構成翻訳系でのウイルス合成を試みた。 (1)RNAウイルスの中でC型肝炎ウイルスの翻訳は高濃度のマグネシウムの存存下では翻訳開始因子無しで進めることができることを利用し、再構成系を単純化した。つまり、翻訳伸長因子eEF1(eEF1A,eEF1Bα,eEF1Bγ)、eEF2翻訳停止因子eRF1、eRF3、アミノアシルtRNAリボソームサブユニット(40Sと60S)を混合し、再構成翻訳系を構築した。このシステムにHCV-IRES-Renilla-luciferase RNAを加え、加温した。特にマグネシウムの濃度に留意し、1mMから10mMまで細かく検討した。1-3時間後、ルシフェラーゼ活性を測定し、タンパク質が合成されているかどうか観察した。各々のコンポーネントがすべて揃っている条件でのみルシフェラーゼが 合成された。最適条件を見出すために各々の因子の濃度を変化させると、比較的少量で済む因子はeEF2とeRF1、eRF3であり、最も高濃度を要求するのはeEF1とアミノアシルtRNAであった。また、マグネシウムの濃度は3.5-5mMでのみ翻訳が進行した。温度は37度が最適であった。 (2)セルフリー系でのRNAウイルス合成は特にカプシド形成に焦点を合わせた。脳心筋炎ウイルスの場合、1A-1B-1C-1Dという融合タンパク質が合成され、自身の持つプロテアーゼによって1A-1B、1C、1Dに切断される。そして各々が5分子集まりペンタマーを形成する。ペンタマーが12分子集まることによりウイルス粒子前駆体ができる。そこにRNAが入り、1A-1Bが1A、1Bに切断され、成熟ウイルス粒子となる。ヒト細胞抽出液由来試験菅内において、この過程を効率よく再現できるようになった。合成されたウイルス粒子を電子顕微鏡で確認するため、精製を行った。ショ糖密度勾配遠心を行うだけではリボソームと分離することができないため、反応後、界面活性剤、RNase処理、ピューロマイシン処理、高塩濃度処理を行ってからショ糖密度勾配遠心を行うことにより、ほぼ完全にウイルス粒子を精製できる方法を確立した。 (3)再構成系においてEMCVウイルスのカプシド領域1A-1B-1C-1Dの合成を試みた。ウエスタンブロットを行ったが合成は確認できなかった。まだ、(1)の再構成系が最適化されていないと考えられ、特にeEF1とアミノアシルtRNAの濃度をさらに高くし、系を透析法にて長時間反応型に変える必要があると考えられる。
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