2010 Fiscal Year Annual Research Report
成長ホルモン、IGF-Iによる非アルコール性脂肪性肝炎の治療応用
Project/Area Number |
20200079
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
高橋 裕 神戸大学, 医学研究科, 講師 (70301281)
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Keywords | 非アルコール性脂肪性肝炎 / NASH / 成長ホルモン / IGF-I / 酸化ストレス / 星細胞 |
Research Abstract |
私たちはこれまでに成人成長ホルモン分泌不全症(AGHD)に非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を合併した症例においてGH補充療法が著効した一例を報告した。NASHは予後の悪い病態だが、その治療法は確立されていない。本研究においては、GH/IGF-Iを用いた一般のNASHへの臨床応用を目指した基盤の樹立を目指す。これまでに1)AGHD症例における臨床研究、2)AGHDモデルであるSDR(Spontaneous dwarfrat)を用いた分子生物学的研究、3)NASHモデルであるコリンメチオニン欠乏食下のdb/dbマウス(CMDdb/db)を用いたGH/IGF-I治療による効果の解析、4)初代培養肝臓および星細胞を用いた機序の解析を行ってきた。その結果、少なくとも21%のAGHD症例にNASHが合併していること、GH補充療法によってNASHが組織学的に改善すること、SDRがよいNASHモデルでありGH/IGF-Iが効果を示すこと、CMDdb/dbに対してGH/IGF-Iが線維化の抑制を示すことを見いだした。具体的には、GH/IGF-I欠乏状態においては内臓肥満、肝臓における脂肪沈着、炎症、線維化に加えて、星細胞の活性化が起こっていた。そしてNASHモデルマウスにGH/IGF-Iを投与するとこれらのNASHに伴った変化がGH/IGF-I特にIGF-Iによって劇的に改善した。さらにその機序としてミトコンドリア機能および酸化ストレスの軽減とIGF-Iによるp53蛋白を介した星細胞機能調節が重要であることを発見した(論文作成中)。また臨床研究として、AGHD症例に高頻度に非アルコール性脂肪肝(NAFLD)/NASHを合併し、GH補充療法によって改善することを見いだした(論文投稿中)。これらの結果よりGH/IGF-Iが一般のNASH治療に応用できる可能性が示された。
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