2011 Fiscal Year Annual Research Report
身体図式を基礎とした動的イメージ生成の脳内メカニズムの解明
Project/Area Number |
20220003
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
乾 敏郎 京都大学, 情報学研究科, 教授 (30107015)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山口 陽子 独立行政法人理化学研究所, その他部局等, 研究員 (00158122)
水原 啓暁 京都大学, 情報学研究科, 講師 (30392137)
佐藤 直行 公立はこだて未来大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (70312668)
笹岡 貴史 京都大学, 情報学研究科, 助教 (60367456)
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Keywords | イメージ生成 / fMRI / 脳波 / 神経計算論 / 認知地図 |
Research Abstract |
物体の心的回転および回転運動の知覚において,空間参照枠の競合により,時間の経過に伴って回転軸が切り替わる多義的回転運動が知覚されるかについて検討した.その結果,回転軸が曖昧な仮現運動刺激に対して,回転軸を定義する空間参照枠の競合により多義的知覚が生じることを示し,各参照枠の寄与は我々の先行研究と一致していた.さらにベイズ決定の枠組みを適用することで本研究の結果が説明できることを確認した.つぎに,Inui & Ashizawa(2010)が提案した心的回転の背側系のモデルをより具体的にするため, RBFネットワークによって心的回転が実現できるかどうかを検討した.さらに,心的回転および視点変換に関わる神経基盤について調べるため,fMRI実験を実施した.自己視点を移動させるイメージを作る場合(視点変換条件),物体を回転させるイメージを作る場合(心的回転条件)の両方の条件で共通な活動が両側上・下頭頂小葉と両側運動前野腹側部において見られ,心的回転と視点変換に共通のイメージ変換ネットワークが存在していることが示唆された. 身体運動をともなう物-場所記憶課題遂行中のfMRI計測を実施した.その結果,全身運動をともなう物―場所記憶における左海馬傍回場所領域と頭頂皮質(右上頭頂皮質(BA7),楔前部(BA31))との連携を示唆する結果が得られた.つぎに身体移動情報と環境視覚手がかりを統合するメカニズムとして,視覚シーンのハフ変換を用いた内嗅野グリッド細胞に基づく神経回路モデルを提案した.また運動情報と視覚情報を自己位置や方位によらず統合し,かつ生理学的にも妥当な神経メカニズムとして,ハフ変換を用いたモデルを提案した.さらに,身体の環境内での移動情報を積分するグリッド細胞の情報からガウス法を用いてhoming vectorを計算する手法を提案した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
身体図式を基礎とした物体の動的イメージ生成過程について,頭頂葉を中心とした脳内ネットワークを同定し,身体運動による物体認識の促進や心的回転における身体移動の拘束の影響を示し,これらの脳内メカニズムについての神経回路モデルを構築した.さらに,遅延視覚フィードバック下での自己身体認知の脳内ネットワークを同定し,自己身体イメージの生成過程についても検討を行うとともに,身体図式に基づいた動的イメージ生成過程が物体運動の知覚においても機能していることを示すなど,当初の計画以上に研究が進展している.また,身体運動に基づいた環境の認知地図の動的形成過程について,ラットのグリッド細胞の概念を取り込んだ数理モデルを提案するとともに,身体運動を伴う物・場所記憶形成にかかわる脳内ネットワークを同定した.さらに,視覚シーンのハフ変換を取り入れることで提案したモデルをより生理学的に妥当なものへと発展させるとともに,3次元空間における認知地図形成のモデルとしての3Dグリッド細胞の理論,およびグリッド細胞の情報から環境内での移動経路を計算する理論を構築するなど,当初の計画以上に研究が進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
これまで得られてきた物体・身体・環境の動的イメージ生成過程に関する成果に基づいて,これらの過程が身体図式に基づいて統合される脳内メカニズムを明らかにする.そのために,物体運動と身体運動のイメージ生成機能の比較検討および物・場所記憶形成の脳内メカニズムにさらに検討していくとともに,我々が開発した機能的fMRIと脳波の統合化解析手法による脳機能計測データの解析をさらに進め,心的イメージ機能の神経基盤を明らかにしていく.
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Research Products
(14 results)