2011 Fiscal Year Annual Research Report
海氷生産量のグローバルマッピングとモニタリング構築
Project/Area Number |
20221001
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
大島 慶一郎 北海道大学, 低温科学研究所, 教授 (30185251)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
江淵 直人 北海道大学, 低温科学研究所, 教授 (10203655)
青木 茂 北海道大学, 低温科学研究所, 准教授 (80281583)
深町 康 北海道大学, 低温科学研究所, 准教授 (20250508)
豊田 威信 北海道大学, 低温科学研究所, 助教 (80312411)
北出 裕二郎 東京海洋大学, 海洋科学部, 准教授 (50281001)
|
Keywords | 沿岸ポリニヤ / 海氷生成 / 熱塩フラックス / マイクロ波放射計 / 南極底層水 / ケープダンレー / オホーツク海 / 中層循環 |
Research Abstract |
今までの研究で、南極第2の高海氷生産域であるケープダンレー沖が未知の南極底層水の生成域であることをつきとめた。今年度は係留系データと衛星データによる海氷生産量の見積もりから、全南極海で沈み込む底層水のうちの約10%程度がこの海域から潜り込んでいると推定した。東京海洋大の海鷹丸による係留系観測から、高海氷生産域であるビンセネス湾でも、ケープダンレー沖と比べると規模は小さいが南極底層水の生成が生じていることが示唆された。以上の研究から、従来言われているような、棚氷や大きな窪地がなくとも、大きな海氷生産が生じていれば底層水となりうる水の潜り込みが生じることが示唆された。昨年度までは衛星マイクロ波放射計SSM/Iデータを用いて、南極海と北極海において海氷生産量のマッピングを行ってきたが、本年度はより高分解能のAMSR-Eデータを用いて、北極海とオホーツク海の海氷生産量のマッピングを行った。さらにオホーツク海では、海氷の移流も考慮して、海氷生成・融解に伴う塩フラックスも見積った。これらのデータセットを整備し、http://wwwod.lowtem.hokudai.ac.jp/polar-seaflux/にて公開した。本マッピングは、今までよくわかっていなかった、海洋及び大気モデルの海氷域での熱塩フラックス条件を与えるデータセットにもなっている。オホーツク海上層においては、過去及び最新の海洋データの解析から、この40年で平均約0.05psuという大きな低塩化が生じていることが示された。これは海氷生産の減少に伴う海氷の持つ塩分の再配分効果の弱化によることを示唆した。さらに、生産量の弱化と低塩化により、高密度水の生成が減少し、北太平洋まで及ぶ中層循環が弱化していることも示唆した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第一の目的である、海氷生産量と海氷域熱塩フラックスのマッピングについては、南極海、北極海、オホーツク海すべての海域で順調に進んでおり、それらのデータセットはウェブ上で公開され、すでに国内外の研究者に使用されている。今まで難しかった南極海・北極海での係留系観測に成功し、さらなる高精度化のための比較・検証データも取得され、データセットのバージョンアップが進行中である。第2の目的である、海氷生産量と海洋中深層水との関係についても、両者の明確な対応が示された。南極海では第2の海氷生産海域であるケープダンレー沖が南極底層水の生成域であることが観測によって明らかになった。オホーツク海では海氷生産量の減少トレンドが定量的に示され、それが中層水の変質や中層循環の弱化の原因になっていることが示唆された。
|
Strategy for Future Research Activity |
すでに作成・公開されていると海氷生産量と海氷域熱塩フラックスのデータセットを、今後AMSR-Eのデータを用いることでデータの分解能を倍上げる予定である。また、係留観測で取得した沿岸ポリニヤ(薄氷域)のデータ(北極海では平成22・23年7月、南極海では平成23年2月取得)の氷厚データへの変換・補正解析を平成24年7月までに終了させ、これを比較・検証データとして、薄氷厚アルゴリズムの高精度化を行い、海氷生産量・熱塩フラックスデータも含め、平成24年度中にバージョンアップする。沿岸ポリニヤで取得されたデータセットはそれ自体、過去には得られたことがない、高精度の海氷・海洋同時取得データセットであるので、これに衛星データも組み合わせ、沿岸ポリニヤ及びそこでの高海氷生産の過程を明らかにする研究も行う。特に南極ケープダンレー沖での巨大ポリニヤの形成と高海氷生産機構を明らかにする。
|
Research Products
(40 results)