2011 Fiscal Year Annual Research Report
地域統合のスピルオーバー効果とサイクル効果:アジアと拡大EUの成長と循環
Project/Area Number |
20223003
|
Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
高阪 章 関西学院大学, 国際学部, 教授 (00205329)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小川 英治 一橋大学, 大学院・商学研究科, 教授 (80185503)
木村 福成 慶應義塾大学, 経済学部, 教授 (90265918)
深川 由起子 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (30306485)
佐藤 清隆 横浜国立大学, 経済学部, 教授 (30311319)
三重野 文晴 神戸大学, 大学院・国際協力研究科, 教授 (40272786)
|
Keywords | 地域統合 / 生産ネットワーク / スピルオーバー効果 / サイクル効果 / マクロ金融リンケージ / 金融深化 / 通貨統合 |
Research Abstract |
地域統合化は貿易投資を通じた「生産ネットワーク」の拡大によって生産性成長を促す「スピルオーバー効果」をもつと考えられるが、他方で、資本フローを通じた資産市場の拡大は景気循環を増幅する「サイクル効果」を併せ持つ。本研究では、拡大EUを比較軸に、アジア太平洋の地域統合化における両効果とその相互作用を検証し、それによる産業構造・金融資本市場の変容に対する新たな政策選択・開発戦略を構想する。今年度の成果のうち年度末の国際ワークショップの成果の一部を以下に要約して紹介する。 まず、東アジア新興市場の国際資本市場とのマクロ金融リンケージと国内金融システムとの相互関係を考察した。その結果、外国資本流入の構成はアジア危機前後で大きく変容し、FDIとその域内投資が大きな役割を果たしていること、国内金融システムによる民間投資ファイナンスのアジア危機後の回復は実物経済と対照的に停滞していること、そのために却ってグローバル金融危機がアジア危機型の負の影響をもたらす可能性は小さいこと、などが明らかになった。 次いで、グローバル金融危機と東日本大震災という2つの巨大ショックが日本の輸出に与えた影響を、機械産業の生産ネットワークの特徴に焦点を当てて分析した。そこでは、日本の機械輸出の減少と回復を利潤構造の関係、および輸出への参入・退出要因を分析し、両ショックは、共に東アジアとの生産ネットワークの安定性と頑健性を示す一方で、企業行動には異なるインパクトを与えたことが明らかになった。最後に、東アジア・欧米間における需要ショックの波及メカニズムを分析した。国際産業連関データベースを構築し、これを用いて米国の需要減少が中間財貿易を通じて国内生産にどのような影響を与えるのかを推計した。同ショックが東アジアに与える負の影響は拡大しているが、日本は中間財を国内調達しているため、他の東アジアへの波及効果は小さいという非対称性が存在することが明らかになった。
|