2011 Fiscal Year Annual Research Report
電子線コンプトン散乱の時間分解反応顕微鏡の開発による物質内電子移動の可視化
Project/Area Number |
20225001
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高橋 正彦 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (80241579)
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Keywords | 化学物理 / 原子・分子物理 / 電子線散乱 / 時間分解分光 |
Research Abstract |
本研究計画4年目の平成23年度は、平成20年度に開発した球型アナライザーを同形のまま2.2倍にスケールアップした超大型の(e,2e)電子分光器2号機(平均軌道半径220mm)の開発を行った。また散乱電子のトラジェクトリーシミュレーションに基づき、電子検出器直前の電子レンズの改造を行った。これらにより、本実験で検出すべき散乱二電子に対して究極的検出効率を得ることに成功した。さらに、本年度に購入したオプティカルパラメトリックアンプシステムを、前年度までに整備した一体型フェムト秒レーザー、励起用Nd:YLFレーザー、フェムト秒再生増幅器システム、第3高調波発生器、および本年度に開発したディレイ光学系と組み合わせることにより、本研究で開発する装置をシステムとして完成させた。この成果を踏まえ、超短パルス電子線を励起源とするコンプトン散乱の時間分解反応顕微鏡実験を通常の安定原子分子を標的として予備的に開始した。 上記の予備実験を通して、約30psの時間分解能の条件下でシステムの複合的な最適化を図った。すなわち、本研究実験の信号強度を支配する、標的分子線および超短パルス電子線の強度の向上を図った。前者の標的分子線に関しては、極めて指向性の高い分子ビームの生成を可能とするキャピラリプレートを用いた独自の大強度分子線源を開発した。一方、後者の超短パルス電子線強度に関しては、電子銃2号機を製作し、エネルギー広がりを5eV以下に保持したままビーム強度を10倍向上することに成功した。以上により、通常の安定原子分子を対象とした予備的結果ではあるが、超短パルス電子線を励起源とする電子非弾性散乱実験を世界に先駆けて具現化した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画の申請時の計画調書にも記した通り、本研究の最大の目的は、化学反応を先導する形で起こる物質内電子の運動の変化を直接的に観測する世界初の実験手法の開発である。この意味において、これまでの研究成果は当初の年次計画にほぼ沿ったものであり、また当初の目標に向けて研究は概ね順調に進展していると自己評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究計画は平成24年度が最終年度となる。平成24年度はこれまでの4年間の装置開発に関する成果を結集し、当初の目標である化学反応の電子レベルでの可視化法を開発・確立し、時々刻々変わる過渡系の物質内電子運動の変化の様子を幾つかの系で観測する予定である。一方で、より高い信号強度を得る目的に、東北大多元物質科学研究所機械工場および分子科学研究所装置開発室からの技術支援を受けて、キャピラリプレートを用いた独自の大強度分子線源の2号機の開発も並行して行う予定である。
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Research Products
(32 results)