Research Abstract |
本研究では,固体材料の塑性変形の基礎メカニズムである転位を素欠陥とし,その素欠陥と素欠陥の相互作用,および素欠陥と結晶粒界や表面・界面といった周囲欠陥との相互作用で特徴づけられる塑性物理現象を実験力学および計算力学の両面から解明し,新たな塑性物理学の学理の構築を目的とする.これまでは,単結晶を対象にして,ナノインデンテーションに見られる変位バーストと呼ばれる転位の集団的射出挙動の解明に焦点を絞り,いわば素欠陥同士の相互作用を明らかにしてきた.その成果を踏まえて,本研究では初期欠陥の存在確率が0に近い理想状態で射出する変位バーストを試行素欠陥に位置づけ,周囲欠陥である面欠陥の結晶粒界との相互作用を調査してモデル化するメゾ・ディフェクトメカニクスの構築を行い,マクロな塑性現象との関連付けをめざす. 本年度では,粒界近傍におけるナノインデンテーションの実施と,エネルギー論的なモデリングによる転位と粒界の相互作用の計算力学的考察を実施した.(1)まず,無酸素銅(純度99.96%)を用いで,再結晶化温度250℃近傍で適切な焼き鈍しを施し,約3倍以上までに再結晶を進行させることによって,インデント位置と粒界問距離が明確になる効率的なサンプルを作成した.(2)肥大化させた(1)の結晶に対して,ナノインデンテーションを実施し,粒界から十分離れた粒内でのインデンテーションが,単結晶の結果とほぼ一致することを確認した.(3)粒径と降伏点の関係を表すホールペッチの関係をもとに,粒界までの距離とバーストの臨界荷重から導かれる臨界せん断応力の関係を求めて,距離依存性を持つことを確認した.(4)刃状転位と対称傾角粒界との相互作用について,最小エネルギー経路を計算力学的に求めるモデリングにより評価した結果,従来のパイエルスポテンシャルより十分大きなエネルギー障壁のあることがわかった.
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