Research Abstract |
今年度は,昨年度に引き続き,多結晶試料から適切な粒界をはさむ2結晶粒領域を取り出し,結晶学的な相互作用が明確な試料の作成と,負荷応力評価が容易な圧子を用いたナノインデンテーションを実施した.また,計算力学的観点から,相互作用のメカニズムを解明するための新たな手法の開発に注力した.その結果,つぎの成果が得られた.まず,再結晶処理後の銅(Cu)材料を用いて,結晶方位解析により,Σ3双晶を介した比較的低指数の組み合わせを選択した試料を抽出し,その結晶学的方位を確定した.これは,従来の単結晶を用いた結果との比較検討が容易になるようにするためである.電解研磨を施した試料表面の双晶境界近傍にナノインデンテーションを実施し,結晶粒の組み合わせによっては,単結晶と類似した変位バースト特性の示すことを見いだした.現在,結晶学的および力学的観点から,そのメカニズムをまとめている.また,より明確な粒界・転位(ナノインデンテーションによる転位群)相互作用の挙動を把握するために,集束イオンビーム加工機による微小2結晶粒試験片の作製を引き続き実施し,一様な圧縮応力が負荷できるフラット圧子の設計と予備試験を実施した結果,従来のバーコビッチ三角錐圧子と同様の変位バースト挙動が得られた つぎに,計算力学による粒界と転位の相互作用メカニズムの検討を行った.双晶粒界を持つ2相結晶体モデルに対する押込み分子動力学シミュレーションを実施し,粒界直上ではなく,その近傍での臨界せん断応力が低下することを明らかにした.また,一般には第一原理計算での解析が困難な,転位とΣ3双晶粒界の不均質モデルを提案して,エネルギー論的観点からのメカニズムの解明を行った.そして,交差すべり等の複雑な転位運動のモデル化が容易なレベルセット法による転位動力学法を新たに開発し,その転位近傍の内部応力場の推定が可能になった
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