2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20226016
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
福岡 淳 北海道大学, 触媒化学研究センター, 教授 (80189927)
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Keywords | バイオマス / 地球温暖化ガス排出削減 / 再生可能エネルギー / 環境技術 / 触媒・化学プロセス |
Research Abstract |
セルロースの加水分解反応によるグルコースの合成を検討した。本反応に対し炭素が触媒として機能することが分かったが、セルロースと炭素はどちらも固体であるため接触効率が低く、分解には230℃を必要とした。一方でグルコースは熱分解してしまうため、グルコースとオリゴ糖を合わせた収率は最大で約40%と中程度であった。この問題を解決するために、セルロースと炭素を一緒にミルしてから反応を行ったところ、反応が劇的に加速され、210℃で加水分解が効率良く進行し、グルコースとオリゴ糖を合わせた収率は88%に達した。 次にセルロースの水素化分解反応を実施した。これまでNi/C触媒の活性は低く糖アルコールを合成できないと考えられてきたが、報告者はニッケルの担持量を50wt%以上に増加させると活性が大きく向上することを見出した。すなわち、50wt%Ni/C触媒を用いると、ソルビトールとマンニトールが収率64%で生成する。各種検討の結果、ニッケル粒子径が20nm以上であるとシンタリングならびに酸化による失活を抑制できることが示唆された。さらに実バイオマスの水素化分解反応を実施した。熱水洗浄した稲藁ならびにススキをPt/C触媒により分解したところ、含有するヘミセルロース分からキシリトールとアラビトールが収率82%で得られた。 最後にリグニン利用を検討した。近年、リグニン由来のバイオオイルのモデル基質である4-プロピルフェノールを水中で水素化分解し、プロピルシクロヘキサンを合成することが精力的に検討されている。これまでの報告では、脱水反応によりC-0結合を切断するために均一系酸触媒や分解してしまう固体酸が必須とされてきた。しかし、報告者はPt/C触媒がC-0結合を還元的に直接切断できることを見出だし、酸触媒を使用せずとも定量的にプロピルシクロヘキサンを得ることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究方策は当初、リグニンまたはリグニン誘導体からアルカンを合成することと記載した。実際に、Pt/C触媒により4-プロピルフェノールからプロピルシクロヘキサンを99%以上の収率で合成することに成功し、成果は既に論文発表済みである。また、中間評価にて企業との連携を推奨された。報告者はセルロースの加水分解に関して、企業と連携してプロセスの確立に取り組んでいる。実際に、グルコース収率を実用レベルに高める目的で検討を行い、混合ミル法を開発した。 以上の点から、当初の計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
報告者はこれまでセルロースからの糖アルコールを合成を検討してきた。そこで、生成した糖アルコールを有効利用するため、プラスチックモノマーへの変換を試みる。具体的には、ソルビトールを脱水してイソソルビドを合成可能な固体触媒を開発する。イソソルビドを共重合剤に用いたポリエチレンテレフタレートは耐熱性プラスチックとして有用である。 次に、セルロース加水分解の連続流通プロセス化を試みる。つまり、炭素とセルロースを混合ミルし、スラリー流通反応器内で加水分解する。さらに固体と液体の生成物を分離して、固体残渣にはセルロースを添加した後、フィードバックする。 またリグニン利用に関しては、4-プロピルフェノールからの芳香族炭化水素の合成を試みる。芳香族はアルカンよりも付加価値が高いため合成できれば意義深い一方、部分水素化反応であるため本反応に高い選択性を示す触媒を開発することは挑戦的な課題である。
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Research Products
(29 results)