Research Abstract |
ゲノム地図作製により,2010年7月にフグゲノムデータベースがFugu V5へとバージョンアップされたが,さらなる充実をはかって論文を完成させ,詳細なデータをすべて公開した. 体サイズ,脊椎骨数,棘(鱗),行動様式,寄生虫耐性の発達について,種間交雑第2世代(F2),戻し交配世代(BC)を用いて遺伝子の探索を続けた.クサフグ,トラフグのF1をクサフグと掛け合わせた戻し交配家系の中から,脊椎骨数に関する3領域の内,1領域のみクサフグ,トラフグのヘテロで,他の2領域はクサフグホモの個体からさらにクサフグに対する戻し交配家系を得ることができた.その結果,目的領域のLOD値が大きく上がり,その領域の脊椎骨数への関与が明確になった,棘,行動様式については,これまでとほぼ同じ領域にQTLが認められ,さらに領域を絞り込むことができた. 体サイズに関するQTLをカバーするトラフグのバクテリア人工染色体をクサフグ受精卵への遺伝子導入を試みたが,今のところ特に明確なサイズ差は認められず,引き続き検討することとした. トラフグ鰓の寄生虫,Heterobothrium okamotoiがクサフグには寄生しないことから,両魚種における発現量の異なる分子を二次元電気泳動およびサブトラクション法で探索した.その結果,候補遺伝子としてトラフグ皮膚で見出されたパフレクチンがトラフグ鰓では発現しているのに対し,クサフグではほとんど発現していないことが分かった.パフレクチンはH,okamotoiに結合することが知られており,寄生成立の可否に関わっている可能性が高いことからさらなる検討を続ける予定である. ホルモン処理によるトラフグ1年魚の催熟試験の結果,結果,サケ下垂体を投与した雄個体すべてが産卵期前にGSI2%以上にまで成熟が進み,1年魚の催熟が可能であることが証明された.関連して昨年度作出したYY個体から精子を得ることに成功し,全雄技術への道が大きく開かれた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
トラフグ全ゲノム解析に関する論文を完成させたことで,データをすべて公開することができ,だれでも自由に利用できるようになった点,極めて大きな成果である.その一方,掛け合わせ実験は制約が大きく,たまたま質の悪い卵を使わざるを得なかったなど,期待をやや下回った,寄生虫耐性/感受性に関しては,トラフグとクサフグの鰓で発現する遺伝子やたんぱく質の違いを調べ,複数の候補分子が浮かび上がり,今後に期待がもたれる.性決定遺伝子については,機能面からのサポートデータが得られ,論文として投稿段階に至った.全雄技術については,YY個体からの精子が得られ,実用化に向けた最終段階に到達した.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の最終年度として,領域をさらに絞り込むことに留意して選抜個体間の掛け合わせを行なうことにより,遺伝子座の特定を進め,遺伝子の特定をめざす.寄生虫耐性/感受性に関しては,QTL解析の結果にトラフグ,クサフグ間での発現比較研究の結果を加えて責任遺伝子を絞り込み,機能面を明らかにして行く.性決定遺伝子に関連してYY雄から採取した精子を用いた受精卵を得ることにより全雄技術を確立させる.これらの研究を通じて,ゲノム情報を活用した育種研究のあり方を提言して行きたい.
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