2010 Fiscal Year Annual Research Report
筋萎縮性側索硬化症とTDP-43:その病理像の全貌と分子病態機序の解明
Project/Area Number |
20240037
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
高橋 均 新潟大学, 脳研究所, 教授 (90206839)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
豊島 靖子 新潟大学, 脳研究所, 助教 (20334675)
小野寺 理 新潟大学, 脳研究所, 准教授 (20303167)
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Keywords | 筋萎縮性側索硬化症 / TDP-43 / 臨床病理 / 免疫組織化学 / 封入体 / 分子病理 / 分子生物学 |
Research Abstract |
本年度は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)におけるTDP-43異常について、以下の分子病理学的研究を行った。 (1)ALS患者剖脳におけるTDP-43スプライシングバリアントの解析:TDP-43のエクソン内でのスプライシングは、このエクソン内に、2カ所にイントロンを形成することで制御されている。主なものは1、5番であり、1番はナンセンス依存性分解機構で分解される。最初のイントロン1のスプライシングが極めて多様性に富むが、ここが正確なアクセプター、ドナーサイトを使用しない場合、イントロン2のスプライシングがおこらず、ナンセンス依存性分解機構が惹起されず、結果として、C末の異なるTDP-43が産生される。患者剖検例の脊髄由来cDNAを検討し、これらC末の異なるTDP-43由来のmRNAの存在することを確認した。 (2)TDP-43のスプライシングを制御する因子の検討:mRNA前駆体のスプライシングはmRNA前駆体への抑制因子と促進因子の結合のバランスで制御されている。促進因子の代表的なものとしてSC35、抑制因子としてはhnRNPが挙げられる。TDP-43のエクソン6はこれらの因子の結合領域を多く含む。元来TDP-43はhnRNP結合蛋白であり、スプライシング抑制因子としての役割が推定されている。そこで我々は、TDP-43そのものがTDP-43のスプライシングに寄与すると考えた。KOマウスのヘテロ結合体にてTDP-43のmRNA量が減少していないこと、このマウスの線維芽細胞でスプライシングバリアントの構成が変化していることを確認した。 (3)TDP-43により卿御されるSKAR、U12依存性遺伝子産物のスプライシング異常の検討:ALSでは、TDP-43自身のスプブイシンク異常をきっかけとして、TDP-43の機能喪失により神経障害がおこると推察した。実際、我々が作製したTDP-43のKOマウスは胎生致死であり、またNSE-creマウスと交配させた神経細胞での選択的KOマウスも2週までに死亡した。このことはTDP-43が神経細胞の維持に重要な役割を担っていることを示していた。TDP-43の喪失によりスプライシング異常がおこる遺伝子としてSKARを単離した。 以上、本年度に得られた分子生物学的データを基に、今後、TDP-43のスプライシング異常の存在をターゲットにALSの分子病態機序の解明に迫る研究を継続していく所存である。
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Research Products
(11 results)