2010 Fiscal Year Annual Research Report
分子マーカーによる動物プランクトン初期幼生の判別・自動計測と生態学的研究への応用
Project/Area Number |
20241003
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
津田 敦 東京大学, 大気海洋研究所, 准教授 (80217314)
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Keywords | 分子マーカー / 動物プランクトン / 自動計測 / 生物海洋 / 環境計測 / 初期生活史 |
Research Abstract |
昨年度までに開発したReal time PCRに用いるNeocalanus plumchrus, N.flemingeriを目標としたプローブ・プライマーセットを用いて、カイアシ類ノープリウス幼生を同定し、その精度の検証を行った。両セットを用いて同定されたカイアシ類を各種100個体以上、および、その他のカイアシ類と同定されたカイアシ類100個体以上のDNA抽出試料をPCR増幅しmDNA COI領域を配列を読み同定を検証した。その結果、N.plumcrusに関してはほぼ100%、N.flemingeriに関しては90%程度の同定率であり、生態学的な応用には十分耐えうる精度を示すことが出来た。その他のカイアシ類と同定されたノープリウス幼生の多くはMeteridia pacificaと同定され、その分布は200m以深にもおよび、本種は表層産卵・成長と考えられていたが、新しい示唆が得られた。 確立した方法で、Neocalanus属2種のノープリウス幼生期の初期生活史を解析し始め、現在、秋から春にかけての試料分析が終了している。その結果、N.flemingeriは秋からすべの成長段階のノープリスス幼生が観察され、季節とともに後期幼生が増加し、従来推測されていた、産卵・成長パターンと一致した。これに対してN.plumchrusでは、1月までは後期幼生が出現せず、ノープリウスIII期幼生が季節とともに増加し、3月に少数の後期幼生が観察された。すなわち、N.plumchrusはノープリウスIII期幼生で、成長を停滞(休眠)させ、あるトリガーで時間的に同期し成長を再開させることが強く示唆された。カイアシ類においてはノープリウス幼生期での休眠は報告がなく、非常に大きな発見であることが示唆される。
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Research Products
(12 results)