2011 Fiscal Year Annual Research Report
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20241023
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
齋藤 理一郎 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (00178518)
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Keywords | コヒーレント分光 / ナノチューブ / 電子ラマン分光 / ポリイン内包チューブ / C13同位体 / フォノン局在 / ラマン分光 / 核磁気共鳴 |
Research Abstract |
(1) ナノチューブのコヒーレント分光: ナノチューブに格子振動周期より短い光パルスを照射すると、電子格子相互作用によりすべてのナノチューブが同時刻に振動を始める。特にナノチューブの直径が振動する振動モードは、ナノチューブの立体構造によって、また励起エネルギーによって、振動の初期位相として直径が大きくなる場合と小さくなる場合があることが、実験で観測されていたが、これを理論的研究でその理由を明らかにするとともに、数値計算で振動の振幅を立体構造の関数として求めた。 (2) ナノチューブの電子ラマン分光:ナノチューブの光の非弾性散乱(ラマン散乱)は、主にフォノンの励起によるラマン分光が観測されてきたが、金属ナノチューブのラマン分光を測定すると、従来のラマンスペクトルよりスペクトル幅の大きいスペクトルが観測された。この特殊なスペクトルが、電子電子相互作用による電子ラマンスペクトルであることを見出した。現在理論的な計算による裏付けを行っている。 (3) C13同位体をいれた、ナノチューブのラマン分光:ナノチューブを構成する炭素原子を、同位体であるC13をいろいろな濃度でラマン分光を測定し、周波数およびスペクトル幅の変化を観測し、フォノンの局在を観測した。フォノンの局在に関する理論的計算にも着手した。 (4) ナノチューブ中に内包したポリイン(直鎖炭素分子)のラマン分光スペクトルの計算を行った。また、このポリインの核磁気共鳴スペクトルの計算も量子化化学計算を行い実験と比較した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
カーボンナノチューブの光物性の世界が、この2、3年で急展開した。その理由は、金属ナノチューブと半導体ナノチューブの分離技術に成功し、さらに立体構造の分離まで可能になり、立体構造に依存した物理量が測定可能になった。これにより我々の計算記録と実験結果が直接比較できるようになったからである。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) ナノチューブのコヒーレントフォノン振動を考えるときに、励起子の効果を考える必要がある。この形式化と数値計算を計画している。 (2)電子ラマン分光スペクトルを計算するプログラムを開発し、実際に数値計算する計画がある。 (3)同位体効果は、ひとまず結論ができたので、欠陥に起因するDバンドの計算を推進したい。
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Research Products
(26 results)