2010 Fiscal Year Annual Research Report
神経幹細胞の運命転換における核クロマチンの「グローバルな」状態変化の意義
Project/Area Number |
20241044
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
後藤 由季子 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 教授 (70252525)
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Keywords | 神経幹細胞 / クロマチン / Brm / ニューロン |
Research Abstract |
神経幹細胞はニューロンへと運命決定しても、すぐにはニューロンとしての形質を発現せず、まず必要な場所へと移動してから成熟する。ニューロンが成熟する際には、軸索・樹状突起形成、膜電位の分極、神経伝達物質受容体やシナプス関連分子の転写発現など、ニューロンに特異的な様々な形質が一斉に現れる。しかしながら、このような劇的な変化が一斉に起こる際、何が引き金になっているかについてはほとんどわかっていなかった。そこで、マウス胎児大脳新皮質から採取したin vitro初代培養系の神経幹細胞を用いて、クロマチン状態の変化を検討した。生化学的なクロマチン分画実験を行ったところ、ニューロン成熟に伴って塩やDNaseによりピストンが遊離しやすなることがわかった。さらにFluorescence Recovery After Photobleaching(FRAP)実験により、成熟に伴ってクロマチン分子の移動度が速くなることがわかった。いずれの結果も、ニューロンが成熟する過程でグローバルなクロマチン状態がゆるくなることを示唆していると考えられる。では、このようなニューロンにおけるグローバルなクロマチン状態を変化させる分子は何だろうか?クロマチン状態を制御する様々な分子の発現を逆転写PCR法にて調べたところ、クロマチンリモデリング関連因子の1つBrmの発現がニューロンの成熟に伴って上昇することを見いだした。さらに、BrmをRNA干渉法でノックダウンしたところ、クロマチン状態がゆるくなるのが阻害されるとともにニューロンの成熟に重要な神経伝達物質受容体やシナプスでの開口放出に関する分子の発現の上昇が抑制されることがわかった。これらのことは、Brmが成熟過程に伴うグローバルなクロマチン状態の変化に重要であることを示している。以上より、グローバルなクロマチン状態の変化がニューロンの成熟に寄与している可能性が示唆された。
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