2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20243032
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岡田 猛 東京大学, 大学院・教育学研究科, 教授 (70281061)
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Keywords | 創造性 / 熟達化 / 美術創作 / 認知過程 / 創造性支援 |
Research Abstract |
当該年度においては、美術家の芸術創作の認知モデルを構築することを目的に、美術家と美大生を中心に、ポートフォリオ・インタビュー(これまでに制作した作品のポートフォリオを見ながら、それぞれの作品の制作意図や制作方法などについてたずねるインタビュー)の継続実施を行った。その結果、美術系の大学院を修了して間もない若手の美術家は、熟達した芸術家が有するような「創作ビジョン(作品制作の中核的な制作テーマ)」の萌芽的なテーマを形成していること、先行研究で示されている創造的熟達の段階とは異なる特徴を有するケースがあることなどがわかった。 加えて、熟達した美術家を対象に、アイカメラを装着して作品を制作してもらう実験を実施した。この実験では、以下の2つの実験条件を設定し、「絵のモチーフや写真を用いて独自の絵画作品を制作する条件(モチーフあり条件)」と「モチーフなどを用いずに内的なイメージだけで作品を制作する条件(モチーフなし条件)」における、描画時の眼球運動や瞬目等の活動の測定を行った。データが膨大であるためまだ分析途中の部分もあるが、主な結果としては、モチーフがある場合でもモチーフを最もよく見るのは描画の最初の方だけで、ある程度絵のベースができるとほとんどみなくなること、制作がある程度進むと眼を細めて見る、「細目見」などの特殊な活動が生起することが示された。このような活動は、モチーフの正確なデッサンについての先行研究の結果では見られなかった現象であり、本研究のように美術家独自の絵を描く際に表れる特徴的な眼球運動である可能性が示唆された。今後は、こうした眼球運動の認知的なメカニズムや機能について、より詳細な分析を進めていく予定である。
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