2010 Fiscal Year Annual Research Report
ヒトとニホンザルにおける認知機能の加齢変化についての実験的比較研究
Project/Area Number |
20243034
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
正高 信男 京都大学, 霊長類研究所, 教授 (60192746)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉川 左紀子 京都大学, こころの未来研究センター, 教授 (40158407)
川合 伸幸 名古屋大学, 情報科学研究科, 准教授 (30335062)
川合 南海子 (久保 南海子) 愛知淑徳大学, コミュニケーション学部, 講師 (20379019)
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Keywords | 認知 / 加齢変化 / 老齢ザル / 高齢者 / 動物モデル / 抑制 |
Research Abstract |
加齢にともない、さまざまな認知機能が変化することが知られている。なかでもワーキングメモリと抑制を中心とした高次認知処理システムは、円滑な日常生活を送るうえで重要な役割を果たす。しかし加齢にともなう抑制は一様ではない。たとえば、高齢者はストループ課題やサイモン課題では若齢者に比べて反応時間が長くなりエラーも増加するが、go/no-go課題などでは加齢による変化はみられない。興味深いことに、高齢者が若齢者と同等のパフォーマンスを示す際には、前頭前野の血流量が若齢者より顕著に増加するとの報告がある。そこで本年度は、加齢の影響が見られないとされるフランカー課題と、顕著に現れるサイモン課題の遂行中の前頭前野の血流量の変化を調べた。その結果、従来の研究と同様にフランカー課題では若齢者と高齢者の効果量はほぼ等しかったが、サイモン課題では高齢者の不一致試行での反応時間は若齢者より有意に延長した。近赤外線分光法(NIRS)により課題遂行中の脳血流量の変化を測定した結果、フランカー課題遂行中の左前頭前野の脳血流量は、高齢者のほうが若齢者より有意に増加していた。このことは、これまでに反応の抑制する課題(ストループテストやサイモン課題、go/no-go課題)でのみ知られていた高齢者の脳補償説をはじめて刺激-刺激間の抑制において見いだしたものといえる。いっぽうで、刺激-反応抑制課題であるサイモン課題では、前頭前野右背外側においてのみ、両課題の不一致条件が一致条件よりも有意に多くの血流を増加させた。しかし高齢群と若齢群でそれらの変化に違いはなかった。これらのことは、若齢者と高齢者で脳血流量に差がないときには、高齢者の抑制機能は低下を傾向にあることを示している。別の表現をすれば、この研究から、高齢者はまず反応の抑制機能が低下し、その後の数年は脳の過剰な活動によって、刺激間の抑制を解消することが示唆される。
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Research Products
(4 results)