2008 Fiscal Year Annual Research Report
反転対称性の破れに起因する表面ナノ構造体の巨大スピン分裂バンド構造
Project/Area Number |
20244045
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
坂本 一之 Chiba University, 大学院・融合化学研究所, 准教授 (70261542)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木村 昭夫 広島大学, 大学院・理学研究科, 准教授 (00272534)
小田 竜樹 金沢大学, 理工研究域数物科学系, 准教授 (30272941)
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Keywords | スピン分裂表面電子バンド / 角度分解光電子分光 / スピン分解光電子分光 / 第一原理計算 |
Research Abstract |
本年度の研究成果は以下の通りである。 Si(lll)表面上に1原子層のタリウム(T1)吸着によって形成される(1x1)構造の電子構造を角度分解光電子分光で、スピンの情報をスピン・角度分解光電子分光で測定した。その結果、これまで固体物理学においてどのような二・三次元物質においても観測されたことのない不思議な電子バンド分裂を観測し、このバンド分裂のところでのみ電子スピンの偏極ベクトルが表面垂直方向を向ぐことがわかった。 これまでは、理想的な二次元電子系においてラシュバ効果によって面内にのみスピンの偏極ベクトルが向くとされてきたが、元素の特性、具体的にはT1のスピン軌道相互作用、を加えた「拡張ラシュバ効果」を理論的に考察することにより、表面の対称性が電子スピンの屹立の要因であることがわかった。 異方性を有することから種々のナノワイヤーを形成するテンプレートして用いられているSi(110)表面は、重元素吸着によって異方的なスピン分裂バンド構造が期待される系である。しかしながら、このような興味深い研究対象であるにもかかわらず、その清浄表面の物性さえも理解されているとは言い難い。そこで角度分解光電子分光を用いてSi(110)-(16x2)表面を調べた結果、バンドギャップ中に分散のほとんどない表面準位が4つあることをもとめ、走査トンネル顕微鏡より得た局所電子密度の結果と合わせて、この表面の新しい構造モデルを提案した。
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