2012 Fiscal Year Annual Research Report
反転対称性の破れに起因する表面ナノ構造体の巨大スピン分裂バンド構造
Project/Area Number |
20244045
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
坂本 一之 千葉大学, 融合科学研究科(研究院), 准教授 (70261542)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小田 竜樹 金沢大学, 数物科学系, 教授 (30272941)
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Project Period (FY) |
2008-05-12 – 2013-03-31
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Keywords | スピン軌道相互作用 / スピン偏極電子バンド / 角度分解光電子分 / スピン分解光電子分光 / 第一原理計算 |
Research Abstract |
本年度の研究成果は以下の通りである。 1原子層よりわずかに多い量のタリウムを吸着させて作製したTl/Si(111)-(1×1)表面は金属的なバレー電子状態を有する。C3対称性を有する表面ブリルアンゾーンのK点に現れるこのバレーがスピン偏極しており、そのスピンは偏極度が100%で表面垂直方向を向いていることをスピン分解光電子分光より求めた。通常のラシュバ効果ではスピンは表面平行方向でその偏極度が100%になることはなく、本研究で得られた特異な偏極度とスピンの向きはC3対称性に起因するものであることを理論計算よりもとめた。また、スピン偏極バレーが電子スピンの後方散乱を抑制する可能性を秘めていることから、走査トンネル顕微鏡を用いた準粒子干渉パターンを観測した。得られた準粒子干渉パターンより電子スピンの散乱方向を議論し、その結果、Tl/Si(111)-(1×1)表面の金属的なバレーが電子スピンの散乱を制御するフィルターの役割をすることがわかった。 非放射性重元素のうち、ビスマスと鉛は容易に単結晶が作製できることから、ラシュバ効果に起因する両表面のスピン偏極電子構造に関して多くの研究がなされてきた。しかし、3つめに重い非放射性元素タリウムは、電子構造の測定に耐えうる大きさの単結晶の作製が困難であったことから、これまで理論計算による結果はあるものの、実験による電子構造の研究はない。我々は、Ag(111)表面上にタリウムを蒸着すると電子構造の測定に耐えうる大きさの単結晶が形成できることを発見し、角度分解光電子分光でその電子構造をもとめた。その結果、C3対称性を有するブリルアンゾーンのK点で通常のラシュバ効果とは異なるスピン分裂を観測した。スピン分解光電子分光による詳細な結果がまだないものの、これは対称性とラシュバスピンの相関の重要性を改めて示す結果である。
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Current Status of Research Progress |
Reason
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Research Products
(5 results)