2008 Fiscal Year Annual Research Report
極低温磁化・比熱・誘電測定による磁場誘起量子相転移の研究
Project/Area Number |
20244053
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
榊原 俊郎 The University of Tokyo, 物性研究所, 教授 (70162287)
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Keywords | 量子相転移 / 強相関電子系 / 強相関電子系 / 極低温比熱測定 / 強磁場 |
Research Abstract |
平成20年度は、まず本研究課題の主要設備である磁場勾配付き超伝導マグネットの設置および立ち上げを行った。このマグネットは4.2Kで15テスラ、ラムダ冷凍機を使用して17テスラの磁場が発生できるもので、試運転の結果、所定の磁場が発生できることを確認した。また、希釈冷凍機と組み合わせて100ミリケルビン以下の温度領域で17テスラまでの磁化測定が行えるようになった。これと平行して、以下の研究を行った。 ・G3非クラマースニ重項基底状態を持つPrMg3の低温磁化を精密に調べ、4f電子の磁化率がバンブレック領域でも温度低下とともに上昇し続けることを見いだした。これは伝導電子との混成効果によるものと考えられ、この系における近藤効果の可能性を示唆している。 ・反強磁性転移と超伝導、および四極子転移とが共存する系として知られているrrmNi2B2Cの低温相図を、磁化・比熱・熱膨張測定から調べた。超伝導(Tc=11K)の上部臨界磁場は4K付近で最大値をとり、低温では低下すること、反強磁性転移温度TN=1.5Kでは反強磁性揺らぎのためにカスプ状の極小値をとることなどを明らかにした。熱力学量の測定からこの物質における超伝導と反強磁性の関係を調べたのはこの実験が初めてである。 スピン1/2のカゴメ格子反強磁性体として期待されているボルボサイトCu3207(OH)2・2H20の磁化過程を60mKで調べ、4T付近に弱いメタ磁性的な磁化の増加が存在することを見いだした。この起源はまだ明らかではないが、カゴメ格子におけるスピン相関の磁場変化について重要な情報をもたらす結果であると思われる。
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