2010 Fiscal Year Annual Research Report
極低温磁化・比熱・誘電測定による磁場誘起量子相転移の研究
Project/Area Number |
20244053
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
榊原 俊郎 東京大学, 物性研究所, 教授 (70162287)
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Keywords | メタ磁性 / 重い電子系物質 / 価数転移 / マルチフェロイクス / 三角格子 / 磁力計 / ダイマー系物質 / 三重項状態 |
Research Abstract |
1.YbT_2Zn_<20>の極低温磁化測定:メタ磁性を示す重い電子系化合物YbIr_2Zn_<20>について、極低温磁化測定を詳細に行い、メタ磁性磁場付近で磁化の温度依存性が非フェルミ液体的挙動を示すことを見いだした。この結果は、メタ磁性の起源が価数クロスオーバーであるとする説を支持するものである。また、量子臨界点に極めて近いと考えられる重い電子系化合物YbCo_2Zn_<20>の極低温磁化測定を行い、[111]磁場方向で磁場誘起秩序を見いだした。これは価数揺動を示すYb化合物として初めての現象である。 2.RbFe(MoO_4)_2の強誘電性の起源:理想的な古典ハイゼンベルグスピン系三角格子反強磁性体であるRbFe(MoO_4)_2は約4Kで120°構造の反強磁性秩序を示すとともに、面垂直に電気分極を生じる。この磁気誘起の強誘電性のメカニズムに興味が持たれている。この物質の2つの磁場誘起磁気相について誘電性を調べたところいずれも強誘電性を示さなかった。これによりこの分極の極性は三角格子のスピンカイラリティを反映している可能性が高まった。 3.キャパシタンス式磁力計の超高感度化:極低温磁化測定装置に用いるキャパシタンスセルの改良を行った。可動電極部材に反磁性物質とパウリ常磁性金属を組み合わせて、セルのバックグラウンドをこれまでの1/100に小さくできた。また可動部分の軽量化等によって、従来比で約10倍の高感度化を実現し、10^<-9>emu以下の磁化率の測定が可能になった。これにより、微結晶試料しか得られない系の単結晶磁化測定への道が大きく拓けた。 4.ダイマー1重項基底状態物YbA_l3C_3の単一結晶の磁化測定:上記の改良型キャパシタンスセルを用いて、ダイマー1重項基底状態を持つYbAl_3C_3の単一微結晶試料(0.2mg)の極低温磁化測定に成功し、80mKにおける三重項状態への磁場誘起転移がシャープな多段の構造を持つことを確認した。
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Research Products
(6 results)