2009 Fiscal Year Annual Research Report
スピン揺らぎと電荷揺らぎが絡み合う新しい電子相の開拓
Project/Area Number |
20244055
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鹿野田 一司 The University of Tokyo, 大学院・工学系研究科, 教授 (20194946)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮川 和也 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助教 (90302760)
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Keywords | 有機導体 / 強相関電子系 / 核磁気共鳴法 / 輸送現象測定 |
Research Abstract |
本研究課題ではスピンと電荷の自由度の揺らぎがもたらす新しい電子相の開拓を目的としている。 我々はこの目的のため、電荷、スピンそして格子の自由度が系の性質に重要な役割を果たすと考えられる中性-イオン性転移、特にTTF-CAという物質に着目した。常圧および圧力下での電気抵抗測定から電荷の自由度を、Cl NQRによって電荷および格子の自由度をそして1H NMRよってスピン自由度についての情報をえるべく実験を開始した。これらの結果から、常圧では1次転移であったものが加圧とともに転移における測定量の飛びが小さくなり連続転移へと移り変わっていくこと、さらに連続転移付近においては中性相とイオン性相の大きな揺らぎが存在することが明らかになった。Cl NQR測定によって常圧では電荷移動と格子の二量体化が同じ温度で起こっていたのに対し、圧力下では別々の温度で起こることが分かった。1H NMRより転移温度以下でスピンソリトンの存在を示すデータを得ることが出来た。 スピン揺らぎが重要な役割を果たす三角格子モット絶縁体物質の物性をより詳細かつ広範囲で調べることを目的とし測定温度を量子性がより顕著となるヘリウム3温度まで拡張することを計画した。この目的のためヘリウム3温度使用するヘリウムガス圧力セルおよび、ヘリウム3温度で使用できかつ磁場に対して試料を角度回転することが可能なNMRプローブを導入しその立ち上げを開始した。
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