Research Abstract |
Cs_2Cu_3SnF_<12>とRb_2Cu_3SnF_<12>は我々が初めて合成したS=1/2籠目格子反強磁性体である。昨年度は基底状態がシングレット状態のRb_2Cu_3SnF_<12>について中性子非弾性散乱実験を行い,基底状態のスピン状態(風車状のValence-bond-solid)を検証した。また,相互作用が強くても磁気励起の分散が大きくない事,反対称相互作用であるDzyaloshinsky-Moriya相互作用の効果などを明らかにした。今年度は,この成果を論文にまとめ,Nature Physics誌に発表し,プレスリリースを発表した。また,基底状態が秩序状態のCs_2Cu_3SnF_<12>について中性子非弾性散乱実験を行い,磁気励起の分散関係を測定した。S=1/2籠目格子反強磁性体の基底状態と励起状態は強い幾何学的フラストレーションと量子揺らぎの為に,従来の磁性体には見られない大変エキゾチックなものである事が理論的に予言されているが,統一的な見解は依然として無い。実験的には純良な単結晶が得られる物質が無く,研究は遅々として進んではいなかった。本研究成果はその突破口を与える成果と云えよう。 スピンの大きさが1の三角格子反強磁性体Ba_3NiSb_2O_9の粉末試料を合成し,強磁場磁化測定を行った。そして,飽和磁化の1/3の位置に明瞭な量子効果に依る磁化プラトーを観測した。 1次元量子sine-Gordon(SG)スピン系KCuGaF_6の中性子非弾性散乱を行い,磁場中でエネルギーギャップが開く事,及び1次元量子SG系に特徴的な分散関係の概要を捉えた。 スピンダイマー系T1CuCl_3とKCuCl_3の混晶Tl_<1-x>K_xCuCl_3の磁場中の磁性は,ランダムポテンシャル中のBose粒子系として記述できる。我々はTl_<1-x>K_xCuCl_3の磁場中比熱測定とESR測定を低温で詳細に行い,基底状態は磁気励起triplonが局在したBose glassである事を示した。また,温度磁場相図を求め,相境界がBose glass一超流動転移に特徴的な臨界指数をもつ冪乗則で表される事を初めて示した。
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