2010 Fiscal Year Annual Research Report
放射光X線による強相関電子系物質の電荷密度解析システムの構築
Project/Area Number |
20244059
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
澤 博 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (50215901)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大隅 寛幸 名古屋大学, 理化学研究所・播磨研究所, 研究員 (90360825)
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Keywords | 放射光X線回折 / 精密構造解析 / 電荷密度解析 / 強相関電子系 / 軌道/電荷秩序 |
Research Abstract |
本研究で立ち上げを行ってきたSPring-8 BL02B1の単結晶用新型回折装置は、十分な測定性能を有することが明らかとなった。特に、懸案であった高エネルギー(~60keV)の測定に関しても十分な観測が可能であることから、重元素を含む強相関物質系の測定も可能であることが明らかとなった。10ミクロン角程度の合金系単結晶であれば、精密解析に必要な逆格子空間内の0.2Åの超高分解能測定が可能であることを確認した。更に、最終年度である当該年度では懸案となっていた10K以下の測定が可能となる冷凍機の導入をSPring-8施設との協力で実現することができ、試料の熱伝導などに依存するものの8K程度までの測定が可能となった。本研究課題では、いくつかの典型的な物質群の分子軌道解析、電荷秩序状態の検証を行ってきたが、当該年度では、C_<60>フラーレンケージ中に閉じ込めることに成功したLiイオンを電子密度解析することによって、内包証明だけでなくその電子状態に迫る重要な情報を引き出すことに成功した。LiイオンはC_<60>ケージの中で外界から隔離されているが、結晶中に含まれる陰イオンとの間の静電相互作用だけでなくケージの6員環炭素のポテンシャルにも影響されてある特定の位置に高温でも局在していることが分かった。このことは、容易に外場によってそのLi内包状態を制御可能であることを示しており、分子スイッチの可能性からNature Chem.への論文発表と同時に国内外から多くの取材などを受けた。このような、たった2つの電子しか持たないLi^+イオンの高温での電子密度解析による直接観測は、当初の目的である強相関系の電子状態の解明を実証する結果でもある。更に、分子性強相関系における電荷秩序状態の分子軌道レベルでの観測にも成功しており、発表準備中である。
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