2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20244060
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
花栗 哲郎 The Institute of Physical and Chemical Research, 高木磁性研究室, 専任研究員 (40251326)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
幸坂 祐生 独立行政法人理化学研究所, 高木磁性研究室, 基礎科学特別研究員 (80455344)
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Keywords | STM / 高温超伝導 / 超伝導ギャップ / 擬ギャップ / 準粒子干渉 |
Research Abstract |
昨年度に引き続き、アンダードープ銅酸化物のいわゆる擬ギャップ領域を分光イメージングSTMによって調べた。また、磁場中STMを用いた超伝導ギャップ対称性の研究を行った。 アンダードープ銅酸化物では、結晶格子の四回対称性を破る一次元的な電子状態が出現することをCa_<2-x>Na_xCuO_2Cl_2において昨年度見出したが、この現象を定量的に議論するための解析方法の検討を行った。各サイトにおけるトンネルスペクトルを拡張Dynes関数でフィッティングして得た現象論的なギャップの分布を、局所一次元性を定量化するパラメータとして導入した分光イメージの局所四重極モーメントの分布と比較したところ、ギャップの小さな部分で局所一次元性が発達していることが分かった。この結果は、Mottギャップから擬ギャップが現れる過程が局所対称性の破れを伴うことを示唆している。 磁場中STMを用いた研究では、新しい高温超伝導体である鉄系超伝導体の超伝導ギャップ対称性を調べた。昨年度、磁束による準粒子散乱のコヒーレンス因子を通して、磁場中における準粒子干渉パターンに超伝導ギャップの位相に関する情報が含まれることを銅酸化物において見出したが、この手法を最も単純な構造を持つ鉄系超伝導体Fe(Se, Te)に適用した。鉄系超伝導体は複数の非連結Fermi面を持つことが特徴であるが、磁場中で準粒子干渉の実験を行ったところ、Γ点周りのホール面と、M点周りの電子面で、ギャップの位相が反転していることが分かった。このようないわゆるS_±波ギャップは、非連結Fermi面間のネスティングが対形成に関わっていることを示唆する。
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