2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20244060
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
花栗 哲郎 独立行政法人理化学研究所, 高木磁性研究室, 専任研究員 (40251326)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
幸坂 祐生 独立行政法人理化学研究所, 無機電子複雑系研究チーム, 基幹研究所研究員 (80455344)
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Keywords | STM / 高温超伝導 / 超伝導ギャップ / 渦糸 / 不純物効果 |
Research Abstract |
銅酸化物高温超伝導体と鉄系超伝導体の電子状態を、STMを用いて調べた。 銅酸化物に関しては、Bi_2Sr_2CaCu_2O_<8+d>を試料として、渦糸芯における超伝導の抑制について調べた。Bi_2Sr_2CaCu_2O_<8+d>の渦糸芯では、チェッカーボード状の電子状態の超周期が存在することが知られているが、その起源は分かっておらず、興味深い。超伝導状態における準粒子干渉効果との関連からチェッカーボード構造の起源を調べるため、渦糸状態での分光イメージングを行ったが、磁歪による視野のドリフトが激しく、十分なデータが得られていない。磁歪は、磁束ピン止めと関連しているので、温度をわずかに上げることで、その影響を抑えることができないかどうか検討している。 鉄系超伝導体に関しては、Fe(Se,Te)において、非連結Fermi面間で超伝導ギャップの符号が反転するs±波構造が実現していることを、準粒子干渉効果の磁場依存性から昨年度見出した。この手法を他の鉄系超伝導体に応用し、ギャップ構造の普遍性を調べるために、LiFeAsにおける準粒子干渉効果の実験を行った。しかし、LiFeAsには、準粒子の散乱体となるような欠陥が少なく、明瞭な準粒子干渉パターンの観測には至っていない。また、上部臨界磁場が低いため、容易に超伝導が抑制され、磁場中での準粒子干渉の探索も困難であった。一方で、欠陥が少ないため、個々の独立した欠陥の電子状態を研究することが可能であることを見出した。通常のs波超伝導体では、非磁性欠陥は超伝導に影響を及ぼさないが、s±波ギャップでは、非磁性不純物近傍にギャップ内束縛状態が形成されることが予言されている。自然に存在する様々な欠陥上でトンネル分光を行い、ギャップ内束縛状態を形成する欠陥を見出した。現在、この欠陥の磁性の有無に関する情報を得る手法を検討している。
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