2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20244060
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
花栗 哲郎 独立行政法人理化学研究所, 高木磁性研究室, 専任研究員 (40251326)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
幸坂 祐生 独立行政法人理化学研究所, 無機電子複雑系研究チーム, 基幹研究所研究員 (80455344)
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Keywords | STM / 高温超伝導 / 超伝導ギャップ / 不純物効果 / 渦糸 / 擬ギャップ |
Research Abstract |
鉄系高超伝導体LiFeAs及び、銅酸化物高温超伝導体(Ca,Na)_2CuO_2Cl_2の電子状態をSTM/STSを用いて調べた。 LiFeAsでは、超伝導ギャップの位相構造に関して情報を得るため、単一非磁性不純物が超伝導に与える影響を調べた。超伝導ギャップの位相がFermi面上で変化しない場合、非磁性不純物はその周辺の超伝導ギャップに影響を与えず、転移温度もほとんど変化しない。一方、ギャップに位相反転がある場合、非磁性不純物近傍に超伝導ギャップ内に不純物束縛状態が形成される。Snフラックス法で作製され、微量のSnを含むLiFeAs単結晶に対してSTM/STSを行ったところ、Snと思われる欠陥近傍でギャップ内束縛状態を観測した。Snはどのような形で置換されても非磁性であると考えられるので、この結果は、LiFeAsの超伝導ギャップには位相反転が存在することを示唆する。また、磁場を印加して、渦糸の構造も調べた。広い磁場範囲で通常期待される渦糸の三角格子は観測されず、渦糸格子の小さな剪断弾性定数を反映して乱れた構造をとることがわかった。渦糸中心でトンネル分光を位行ったところ。高々1meV程度の幅しか持たない非常にシャープな準粒子束縛状態ピークをFermi準位直下に観測した。通常の超伝導体では、渦糸芯の束縛状態はちょうどFermi面に表れるので、この結果は大変異常である。渦糸内の準粒子束縛状態が離散的になる量子極限の渦糸が実現している可能性が高い。 (Ca,Na)_2CuO_2Cl_2では、キャリヤ数が少なく超伝導を示さない試料の電子状態分布を詳細に調べた。このドープ領域を特徴づけるいわゆる擬ギャップは、結晶の持つ4回対称性を局所的に破る2回対称のナノスケール構造で特徴づけられる。このようなナノスケール構造がキャリヤドープとともに増え、バルクの超伝導が現れるドープ量で互いに接続する結果を得た。このことは、擬ギャップの存在が超伝導の発現を阻害するものではなくむしろ有益であるであることを示唆している。
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