2010 Fiscal Year Annual Research Report
高分解能非弾性X線散乱法を利用した超臨界金属流体の特異な動的挙動の解明
Project/Area Number |
20244061
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
乾 雅祝 広島大学, 大学院・総合科学研究科, 教授 (40213136)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
星野 公三 広島大学, 大学院・総合科学研究科, 教授 (30134951)
梶原 行夫 広島大学, 大学院・総合科学研究科, 助教 (20402654)
|
Keywords | 金属-非金属転移 / 超臨界流体 / 動的構造 / 静的構造 / 構造物性 / 液体金属 / 溶融塩 |
Research Abstract |
超臨界金属流体が示す特異な動的挙動の起源を明らかにするため、SPring-8の放射光を利用して流体イオウならびに流体水銀のX線散乱実験を行った。また昨年度行った流体As_2Se_3の結果などを液体金属の国際学会で発表した。今年度の新たに行った実験により、以下のような新しい知見が得られた。 まず、超臨界流体イオウ中の分子構造に関する情報を得るため、伸縮モードに着目して高分解能非弾性X線散乱実験を行った。X線回折実験により得られた配位数の減少から2原子分子の存在が予想される低密度領域においても、伸縮モードの平均エネルギーは鎖状分子または8員環分子のものとほとんど一致した。これは、2原子分子どおしが強い相関をもって低密度流体中に分布することを示唆しており、最近、宗尻、星野らが行った第1原理シミュレーションの解釈とも一致する結果である。 次に、臨界点(1478℃、167MPa)近傍の密度9gcm^<-3>の金属-非金属転移領域で特異な動的構造因子が観測された流体水銀の理解を深めるため、25MPaの高圧下で沸点(約960℃)直前の11gcm^<-3>まで体積膨張させた流体水銀のX線散乱、X線小角散乱及び高分解能非弾性X線散乱実験を行った。これらの実験で得られた静的構造因子ならびに動的構造因子は、実験精度の範囲内で相互に一致していた。密度12gcm^<-3>と11gcm^<-3>の動的構造因子に減衰振動子モデルを適用して音響モードの励起エネルギーを導いたところ、超音波により測定された音速に比べて、約30~43%速い正の分散を示した。さらに粘弾性理論に基づくモデル関数を適用した結果、非弾性X線散乱により観測された音響モードは固体的な弾性波の性質を併せ持つ音響モードであることが判明した。 これらの結果について、さらに詳しい解析を現在進めているところである。
|
Research Products
(7 results)