Research Abstract |
本研究のまとめとして北部オマーン・オフィオライトのモホ遷移帯の比較を行った。モホ遷移帯が薄い(10数m以下)場合,遷移帯中~直下のハルツバーガイト中のガブロバンドおよび周辺の岩相および鉱物化学組成が,モホ遷移帯全体の変化を再現していることを見いだした。従って,モホ遷移帯全体がガブロバンド/壁岩と同様のメカニズムで形成されたことが示唆される。また,厚い(1kmまで)モホ遷移帯では,ウェールライトはガブロとメルトの反応で形成されており,ダナイト中にはしばしば硫化物が見いだされる。また,ダナイトのかんらん石はMgに富んでいる(~0.91)。従って,モホ遷移帯は,スラブからの流体(硫黄を含む)の付加により,高い部分溶融度で形成されたメルト(かんらん石に富む)の貫入により,既存のガブロを溶かし込んで形成された二次的なものであることが示唆される。 北部オマーン・オフィオライトのワジ・ヒルティの露出のよい2種類のクロミタイト(調和性および非調和性)を詳細に検討した。このうち,調和性のもののみにスピネル中のシリケートのラメラを見いだした。ただし,スピネル中のパーガス閃石を含む微細な初生包有物は両クロミタイトに見いだされた(ただし,調和性のものは包有物が極めて小さい)。これらより,両者ともに比較的浅所でマグマ的に形成されたものであることが明らかになった。ただし,調和性のものは,より初期に形成され,冷却・減圧を受けている。超高圧クロミタイトに相当するものは見いだされなかった。 日本列島,カムチャツカ弧およびチェジュ島(済州島)の捕獲岩の既存および新たなデータをまとめて,モホの岩石学的実体を推定し,多様性を明らかにした。
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