2010 Fiscal Year Annual Research Report
レーザー誘起パルスX線を用いた巨大分子系の光励起状態の構造解明
Project/Area Number |
20245002
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
福村 裕史 東北大学, 大学院・理学研究科, 教授 (50208980)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梶本 真司 東北大学, 大学院・理学研究科, 助教 (80463769)
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Keywords | 時間分解X線回折 / レーザー誘起X線発生 / 硫酸銅結晶 / d-d遷移 / シクロヘキサン / 動径分布関数 / 光励起状態 |
Research Abstract |
硫酸銅五水和物単結晶を試料として,d-d遷移の光励起とその失活に伴う(220)面間隔の変化を,フェムト秒レーザー誘起パルスX線を用いた時間分解X線回折法により観測した.結果の解析にあたっては独自に作製したプログラムを用いて熱解析を行い,2.5kHzの繰り返し光励起による試料平面方向の温度分布を考慮した.熱の履歴による定常的な回折パターンの変化と過渡的な約15fmの膨張に相当する極めて微少な回折パターンの低角度シフトを観測した.この結晶格子の膨張は光照射から約20ps遅れて観測され始めており,格子の膨張には励起光およびX線のパルス幅よりも長い時間がかかっている.このことは,光励起状態が基底状態に緩和して,結晶のユニット内での振動緩和およびユニット内から格子振動への振動エネルギーの散逸が起こり,格子の膨張いたる過程で遅延が生じたために起きたと考えられる.観測された過渡的な膨張は50ps程度で完了した.以上のように,d-d電子励起状態の緩和に伴うピコ秒領域の結晶膨張ダイナミクスについて明らかにした.また,液体試料については,これまでに既存のX線回折装置を用いて試料の検討を行い,さらに,レーザー誘起パルスX線を用いた極めて雑音の少ない測定システムの構築を行ってきた.これらの成果をもとに,試料としてシクロヘキサンを用いてレーザー誘起パルスX線を用いてX線回折測定を行い,動径分布関数を得ることに成功した.これらの結果は,複雑な分子からなる結晶や極めて回折強度の低い液体試料についても,レーザー誘起パルスX線によるX線回折測定が可能であることを示しており,巨大分子の励起状態やその生成に伴う溶液構造変化の観測へ道を開くものである.
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Research Products
(3 results)