2009 Fiscal Year Annual Research Report
有機薄膜・界面構造の精密制御による電子構造と電荷輸送物性の統一的解明
Project/Area Number |
20245039
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
上野 信雄 Chiba University, 大学院・融合科学研究科, 教授 (40111413)
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Keywords | 有機半導体 / 有機薄膜 / 電荷移動度 / 紫外光電子分光 / 電子状態 / バンドギャップ準位 |
Research Abstract |
当初目的の達成に向けて紫外光電子分光(UPS)装置の超高感度化を行い、これを用いて有機半導体薄膜のバンドギャップ中に存在すると考えられる電子準位の直接測定を行った。また、金属単結晶状の吸着分子の位置、構造ひずみをX線定在波法によって測定し、よく規定された薄膜の分子配向と電子準位の関係を研究した。これらの研究によって以下の成果を得た。 (1)人為的に有機/導体界面に双極子層を形成して、その上にペンタセンを成長させた系において期待されるペンタセンのバンドギャップ中の電子準位を超高感度UPSを用いて精密に測定した結果、最高占有電子準位(HONO)からバンドギャップ中ヘガウス型の電子準位の浸みだしが存在し、フェルミ準位近傍では指数関数型の電子状態密度が存在すること、また後者がフェルミ準位に到達していることを突き止めた。一方、従来、有機半導体を窒素ガスに暴露してもその電子状態の変化は無いと報告されてきたが、Cu-フタロシアニン薄膜を1気圧の純窒素にさらすことで、バンドギャップ状態密度が出現あるいは増加し、343Kのアニールで減少することを突き止めた。これらの結果から、検出したバンドギャップ準位は、いずれの場合も分子集合構造の不完全性に起因する可能性が指摘された。また、それにともなって生じるバンドギャップ準位が有機半導体薄膜のフェルミ準位を決定していると結論された。 (2)上記研究を受けて、C60薄膜がn型電気伝導を示す原因を研究した、分子科学研究所の平本教授グループが作成した超高純度C60単結晶を利用して薄膜を形成してそのバンドギャップ領域を調べた結果、フェルミ準位直下に新しい電子順が存在し、フェルミ準位を決めていることが見出され、過剰電子の存在によるポーラロンの形成に基づく順と推測された。現在より精密な研究によってその原因を追及している。 (3)以上の他、X線定在波法と光電子分光を利用して、フッ素化ペンタセンのAg(111)表面上の幾何学的構造を決定し、その電子準位と分子配向の関係を正確に測定した。 以上、当該年度計画を達成するだけでなく、当初予定より早く目標を達成しつつある。
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Research Products
(6 results)