Research Abstract |
半導体材料の仕上げ加工の主流になっているCMP(Chemical Mechanical Polishing)においては,材料を超精密平滑表面に仕上げることを大前提として高い加工能率が求められている.特に近年,省エネデバイス用の半導体材料としてシリコンカーバイド(SiC)が注目を浴びているが,その機械的・化学的な安定性から最終製品に至るまでに多段階のCMP工程を組まなければならない.現在,CMPはクリーンな環境下で行われているが,加工中の周辺の雰囲気や光などといった加工環境に対してはほとんど考慮されておらず,大気に対して剥き出しの状態で加工が行われている.そのため,不安定な加工特性になりがちで,高能率な加工条件の設定に限界がある.この問題に対処するため,過去の研究において,加工部周辺の環境が加工に及ぼす影響に着目し,雰囲気を制御しながら片面CMP加工を行ったところ,様々な難加工性材料を高能率に加工できる可能性を見出してきた.そこで先の結果に鑑み,両面同時CMP中に加工環境制御を適用することで更なる高能率化を達成することを目的とし,耐圧密閉チャンバー(ベルジャー)型両面同時CMP装置を試作した.本装置を用いて加工環境を制御しながらシリコン(Si)およびSiCの加工特性を把握した結果,Si,SiCともに酸素を含む高圧ガス中で研磨能率が増大し,特に,高圧酸素ガス中で最も高くなり,Siは約1.3倍,SiCは約2.8倍となった.このことから酸素による酸化が加工に影響を及ぼす重要な因子であることを突き止めた.そこで難加工性であるSiCに対しては酸素よりもさらに強力な酸化力を有する活性酸素を加工に用いることを考え,研磨剤中に光触媒であるチタニア粒子(TiO_2)を添加し,高圧酸素ガス中で紫外線を照射しながらCMPを行ったところ,高圧酸素による研磨能率の増加分に加え,光触媒反応による1.3倍の研磨能率の増加を確認した.これらの結果はデバイスウエハの製造コストの低減に貢献できる.(750字)
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