Research Abstract |
本研究は電気駆動によって初めて実現できる電気自動車(EV)の制御機能の追求であり,2分類10のテーマにしぼって研究を遂行している。 1.電気モータの高い制御性を生かした自動車のモーション制御技術 (1)トルク垂下特性を生かしたスリップ抑制制御 昨年から今年にかけて,IPMSM駆動モータでトルク垂下特性を生かした電流制御系によってスリップ時のモータ速度の増加を抑制する手法と調整法を提案し,dq両軸電流制御系に拡張適用した。また,さまざまな手法を統一的に含むMaximum Transmissible Torque Estimation (MTTE)にもとづくスリップ抑制法を提案し,COMS3を改造した実車を用いた走行実験によってもその優秀性を実証した。さらに制御系の安定性についても深い考察を行った。 (2)動的重心位置推定を利用したトラクション制御 この項目については,バンク角の推定を含むロール安定性改善制御について,深い考察と実機実験による検証を行った。 (3)車体横すべり角推定にもとづく車両運動安定化制御についてはとくに新たな知見はない。 (4)DYCとAFSを組み合わせEPSを用いた安定旋回制御 AFS実現上での問題点を実験的に明らかにしようとしている。路面反力を運転者へ伝達しつつAFSからの操舵干渉低減を同時に実現するため,2つの手法(可変アシスト比・規範モデル混合制御,路面反力推定に基づく操舵反力制御)を提案し効果を確認しているが,今年はとくに人間の感度特性の取り扱いについていろいろ検討している。 (5)リアルタイム速度パターン生成を用いた操作性の向上についてもとくに進展はない。 2.キャパシタを用いた移動体エネルギーストレージ・供給技術 (1)キャパシタ駆動小型EVによる新しいライフスタイルに関する考察 さまざまな機会において,モータ/キャパシタ/ワイヤレスによって未来の車社会を描こうという啓蒙を行っている。 (2)PHEVにおける電池とキャパシタの組み合わせ法に関する研究 小規模の実験回路を製作し両者の組み合わせに関する基礎研究を継続中であり,徐々に成果を出しつつある。 (3)キャパシタと高性能DDインホイルモータによる高速回生制御に特化した研究の進展はとくにない。 (4)キャパシタの充放電特性を生かしたAMTに関する研究 モータアシストAMTを提案し,その成立性と制御方法に関する研究は終了し,博士論文となった。駆動力制御と同時に車速に応じたキャパシタの充放電制御の両立が必要である。これに対し.エンジントルクオブザーバを用いた,いかにも電気工学者らしい新しい制御手法を提案し,オートリクショーを改造したハイブリッド車を製作してその有効性を示した。 (5)磁気共鳴を利用した移動体への非接触充電に関する研究 EVへのワイヤレス充電アンテナの検討を詳細に行い,とくに磁気共鳴方式に関して等価回路を用いた見通しの良い設計法を確立し,博士論文として完成させた。磁界型と電界型の両方とも高効率であること,大ギャップ,位置ずれに強いことなどを示し,将来のEVへのワイヤレス給電が十分見通せることを実証した。今後も大規模な継続研究が必原である。
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