Research Abstract |
本研究では、ハーフメタル強磁性体と異種材料の高品質エピタキシャルヘテロ構造の実現を通して、これらの系に特徴的に現れる、1)ハーフメタル特性に伴う高いスピン偏極率と、2)コヒーレント輸送特性の両立を活用し、新しい概念のスピントンネル制御デバイスを創出することにある。今年度は, このような観点に基づき, ホイスラー合金の一つであるCo_2MnGe(CMG)とMgOバリアを用いた強磁性トンネル接合(MTJ)における, CMG/MgOヘテロ界面の状態に対するアニールの影響を, トンネルスペクトロスコピーを通して調べ, 以下の知見を明らかにした. (1) 上部CoFe電極堆積後のアニール温度(T_a)をパラメータとして作製した, CMGを下部電極に用いたCMG/MgO/CoFeMTJについて, T_aを475℃から500℃を増加することに伴い, TMR比が室温において92%(4.2Kにおいて244%)から160%(4.2Kで376%)まで, 不連続, かつ, 顕著に増加することがわかった.さらに, dI/dV(=G)vs V特性が同様に不連続, かつ, 顕著に変化することがわかった.すなわち, (i)T_a=475℃以下の条件で作成されたMTJのG vs V特性が, 特定のバイアス電圧の値について, ピーク構造を示すこと, 一方, (ii)T_a=500℃以上の条件で作成されたMTJのG vs V特性において, このようなピーク構造が存在しないことがわかった. (2) 参照用のMTJの特性との比較から, 観測されたピーク構造は, 下部CMG電極とMgOバリアとの界面におけるピーク型の界面状態密度の存在によるものとして説明できること, また, T_a=500℃以上のアニールによって, 界面状態が変化し, 結果として, スピン偏極率を増大させ, TMR比を上昇させるとして, 説明できることがわかった.
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