Research Abstract |
本研究の目的は,ハーフメタル系ホイスラー合金と異種材料の高品質エピタキシャルヘテロ構造を用いた,新しい概念のスピントンネル制御デバイスを創出することにある.今年度は,ホイスラー合金の代表的な物質であるCo_2MnSi(CMS)とMgOトンネルバリアからなるヘテロ接合におけるCMSの終端面の同定を行い,以下の知見を明らかにした. 試料として,MgOバリアに接するCMS極薄膜を作製し,CoとMnのスピン磁気モーメント(m_<spin>)を,元素を特定して調べることのできるX線吸収スペクトル(XAS)およびX線磁気円二色法(XMCD)によって評価した.CMS薄膜としては,Co面の一層とMnSi面の一層からなるCMSの1 monolayer(ML)を単位として,バルクの厚みに相当する177MLから1MLの極限の極薄膜までを,Fe下地層の上に作製したこの結果,CoとMnのm_<spin>はCMSの膜厚(t_<CMS>)を減少させると共に増加することが分かった.一方,Fe下地層/CMS/MgOバリアからなるヘテロ構造のm_<spin>のt_<CMS>依存性を理論グループとの共同研究により,理論的にも調べ,実験と比較した.理論では,CMSとMgOの界面において,MnSi終端面の場合とCo終端面の2通りの場合について調べた.実験結果はMnSi終端面を仮定する理論結果と定性的に良く一致することが分かった.この結果より,MgOバリアに接するホイスラー合金の終端面を同定する上で,元素特定型のXAS/XMCDによるm_<spin>の測定評価と,理論解析との比較が非常に有効であることを明らかにした.
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