Research Abstract |
本研究は,人間の相互作用機能に重点をおいた“ヒューマトロニクス"と,“操作熟達を支援するメカトロニクス=HAM(Human Adaptive Mechatronics)"を融合させて,効率的かつ自然に人間を支援する機械システムの創出を目指し,(a)熟達を定量的に考慮した人間状態モデルの確立,(b)アシスト手法の提案,(c)操作熟達を向上のためのシステム設計法の確立,を目指している.“熟達"には“個人スキル"と“集団スキル"があり,後者に関連する発話という行為は,自己が獲得した情報を確定する作業であると同時に,他者への意思伝達手段としての2面性を持つ為,特に重要である.そこで本年度は,仮想空間内のロボットを複数の人間が会話をしながら操作して共同作業を行う「箱運搬協調作業シミュレータ」を構築し,さらに複数名の視線計測が可能な装置を開発して,延べ30名の被験者の機械操作・視線・動作・会話・脳波・心拍等の,人の認知状態および熟達の解析に必要なデータの蓄積を図った.複数被験者の操作履歴の相関解析法や,自己組織化マップを利用した操作切替全体像の可視化手法を提案し,これらで解析した結果,1)役割分業化が作業全体の効率向上に貢献し,2)状況に応じた操作モードの明確な選択性が熟達に関連し,3)静的な対象物の直接視は減少して潜在的注意を起こしている,などの有意義な知見が得られた.これらの特性は,個人および集団レベルでの熟達向上のために人間が体得してきた戦略であるといえる.これら知見を,人間状態モデル及び支援システムの構築に活用し,来年度の研究へ繋げる.本成果は,招待講演1件(IEEE ETFA08),雑誌論文4件,国際会議9件などで広く公表した.
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