2008 Fiscal Year Annual Research Report
動的統合系としての極浅海域生態系の維持・変遷機構解明と複合ストレス下での機能再生
Project/Area Number |
20246081
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
灘岡 和夫 Tokyo Institute of Technology, 大学院・情報理工学(系)研究科, 教授 (70164481)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
茅根 創 東京大学, 理学系研究科, 教授 (60192548)
練 春蘭 東京大学, アジア生物資源環境研究センター, 准教授 (40376695)
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Keywords | 極浅海域 / サンゴ礁生態系 / 複合ストレス / 維持・変遷機構 / 機能再生 / 物質循環モデル / 集団遺伝学的解析 / fragmentation metrics解析 |
Research Abstract |
1)サンゴ礁へのストレス要素の一つとして重要性が指摘されながら定量化が進んでいない地下水経由栄養塩負荷について,^<222>Rnトレーサー濃度計測法と栄養塩自動分析法を合わせた地下水起源の栄養塩フラックス評価法を確立し,サンゴ礁内の多地点で地下水起源栄養塩フラックスを定量化した. 2)サンゴ礁生態系物質循環の根幹をなすサンゴ群集代謝に関して,サンゴ礁海水流動・物質循環数値シミュレーションに炭酸系計測データを同化させるという,新たな発想による手法を開発するための基礎的検討を行った.具体的には,先に開発した準3次元サンゴ礁海水流動・物質輸送シミュレーションモデル(Tamuraら,2007)をベースにサンゴ礁海水流動・炭酸系動態シミュレーションモデルを開発し,それにサンゴ礁内の多点多時点で計測した炭酸系データを非線形最適値問題として解くことで,サンゴ礁内の群集代謝構造の空間分布を評価する形のモデル構築を進めた.今年度は基本モデルの構築とその検証データの取得のための現地観測を行った. 3)サンゴ礁地形と物理環境の相互作用について,地形形成と波浪場の関係,礁原の浅い地形によるガス交換の促進という両側面から現地調査の結果に基づいて検討した. 4)アオサンゴの幼生分散を高度多型マイクロサテライト7遺伝子座を用いて解析し,その結果を数値シミュレーションと比較した.その結果,アオサンゴ群集は礁嶺を隔てたサンゴ礁内側と外側で集団分化が見られるなど極めて小スケールの群集単位で維持されていることがわかった.また,現代では集団分化が起こっているものの石西礁湖と白保のアオサンゴ群集の祖先遺伝子型は似ており,長い時間スケールでみると白保海域から石西礁湖に幼生が供給されて群集が発達した可能性も示唆された.さらに,調査の過程で,石垣島東海岸北部の明石において新たなアオサンゴ大群集を発見した. 5)景観生態学的手法に基づくfragmentation metrics解析を多時点の衛星画像解析に適用することにより,群集のパッチ性やその多層スケール構造等の変遷を明らかにすることにより群集の空間的分布構造の変遷を定量的に評価した.
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