Research Abstract |
サンゴ礁生態系への複合ストレスの評価体系の一般化のために,地下水およびそこに含まれる栄養塩類に関する観測を実施するとともに,地下水流出モデルを調査対象地域に適用し,流出パターンを概ね再現することに成功した.また,サンゴ礁生態系炭酸系動態・物質循環モデルの高度化・一般化のために,出水前後における群集代謝の過渡過程を把握するための観測を行うとともに,モデルによる再現を試みた.さらに,栄養塩類(窒素・リン)動態を再現するために,有機物(粘液)や微生物ループのモデル化にも着手した.また,サンゴ礁炭酸系動態モデルのコンパートメントのひとつとしての,サンゴなどの主要な生物を含まない「砂地」における光合成,呼吸,石灰化,溶解など代謝パラメータを現地と実験室において計測し,日中は光合成と石灰化が,夜間は呼吸と溶解が起こっていることを示した.この結果から,「砂地」も炭酸計動態の重要なコンパートメントとしてモデルに取り込むことが必要であることが明らかになった.そして,これらの成果に基づいて,動的統合生態系モデル構築のために必要なモデル構成やパラメータの同定方法等について検討した.一方,造礁サンゴ群集の形成・維持・変遷機構の解明の上で重要となる遺伝構造分布特性に関して,八重山列島内でサンプリングを行ったアオサンゴ(15地点)とハナヤサイサンゴ(14地点)の集団を比較した.特に,裾礁型サンゴ礁である石垣島東海岸に関しては,リーフ内とリーフ外斜面間の集団遺伝特性を比較した.その結果,これらの対象海域での局所的なconnectivityの特性を明らかにすることができた.
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