2010 Fiscal Year Annual Research Report
マイクロリアクターに組み込んだ弾性表面波素子触媒による液相有機合成反応
Project/Area Number |
20246117
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Research Institution | Nagaoka University of Technology |
Principal Investigator |
井上 泰宣 長岡技術科学大学, 工学部, 特任教授 (30016133)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西山 洋 長岡技術科学大学, 工学部, 助教 (50303186)
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Keywords | マイクロリアクター / 弾性表面波 / 共鳴振動 / デバイス触媒 / 格子変位 / 強誘電体 / 圧電効果 / 液相反応 |
Research Abstract |
本研究は、マイクロリアクター内での液相系の有機合成反応に対する触媒の効率を顕著に高める方法の開発を目的とし、弾性表面波や共鳴振動の圧電効果を用いたデバイス触媒による新規な反応システムを構築することを行った。昨年度までに、アルドール縮合反応に対するスカンジウムトリフラート(Sc(OTf)_3)酸触媒の活性が、弾性表面波の伝搬によって顕著に高まること、さらにこの触媒活性化は、共鳴振動でも見られることを示し、触媒活性化が表面に垂直な動的格子変位に起因する機構を示してきた。本年度は、動的格子変位が酸触媒に与える効果をX線光電子分光法により調べるとともに、その結果を基に他の有機合成反応であるアリル化反応に展開した。X線光電子分光スペクトルは、Sc(OTf)_3酸触媒のOTf配位子を構成するFとS元素が2つに分裂し、Sc2p3/2準位が低結合エネルギー側に1.4eVシフトする結果を与えた。このことから、Sc(OTf)_3は素子表面に二つのOTf配位子で吸着するため配位子の立体障害が緩和され、さらにSc金属イオンは強いLewis酸点となるため、触媒の活性化が生じることを明らかにした。この結果は、動的格子変位は、電極に固定化した触媒を活性化できること示しており、このことを検証するため、共鳴振動用の金属Mo電極にさらにIn金属触媒を固定化し、マイクロリアクター内において水存在下でのアリルボロネートである2-アリル-4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロランによるアセトフェノンのアリル化反応を行い、共鳴振動が同反応に対するIn金属触媒の活性を増加させる効果を持つことを見出した。以上の結果から、表面に垂直な動的格子変位効果を持つ弾性表面波および共鳴振動デバイス型触媒をマイクロリアクターに組み込んだ反応システムは、液相触媒合成反応の活性化にきわめて有用であることを結論した。
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Research Products
(4 results)