2009 Fiscal Year Annual Research Report
海洋で繰り広げられるウイルス対宿主の分子生態学的チェイスゲームに関する研究
Project/Area Number |
20247002
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Research Institution | Fisheries Research Agency |
Principal Investigator |
長崎 慶三 Fisheries Research Agency, 瀬戸内海区水産研究所赤潮環境部, 室長 (00222175)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
外丸 裕司 独立行政法人 水産総合研究センター, 瀬戸内海区水産研究所赤潮環境部, 研究員 (10416042)
福山 恵一 大阪大学, 大学院・理学研究科, 教授 (80032283)
和田 啓 大阪大学, 大学院・理学研究科, 助教 (80379304)
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Keywords | RNAウイルス / 渦鞭毛藻 / 宿主特異性 / レアコドン / コートタンパク質 / タンパク質発現系 / 共進化 / ヘテロカプサ・サーキュラリスカーマ |
Research Abstract |
赤潮原因藻ヘテロカプサ・サーキュラリスカーマ株とを宿主とするプラス鎖RNAウイルスHcRNAV株のコートタンパク質遺伝子を大腸菌で発現させたところ、目的タンパク質は不溶性の融合タンパク質として発現された。そこで、SDS-PAGEで分離したコートタンパク質を電気的にゲルから抽出し、さらに有機溶媒で脱SDS化およびリフォールディングを試みることで、可溶性コートタンパク質の精製に最終的に成功した。精製したコートタンパク質の分子サイズは、動的光散乱法では粒径分布20~50nmと推算され、ウイルス様粒子を再構成している可能性が示唆された。現在、この粒子の形状を電子顕微鏡で精査するとともに、収量の向上を試みている。また現在、得られた発現タンパク質をウサギに対して接種することで得られた抗血清の活性・特異性について測定中である。さらに、これまでにウイルス感受性という点で大きく異なると考えられてきたUA型およびCY型のヘテロカプサ株の両方に感染するウイルス株を探索した結果、従来株とは異なる感染特異性を持つHcRNAV群の存在が明らかとなった。すなわち、大まかに言うとHcRNAVは少なくともCY型とUA型の2タイプから構成され、さら細かくみるとUA型は3群(以上)に分けられる可能性が示唆された。これらの結果は、現場環境中のヘテロカプサとウイルスの関係が従来考えられていたものよりもかなり複雑である可能性を示す重要な知見である。今後、これら計4群のコートタンパク質のアミノ酸配列、さらに立体構造を推定・比較することで、ウイルス対宿主の進化的チェイスゲームに関する新たな知見が得られるものと期待される。
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