2011 Fiscal Year Annual Research Report
多機能性GnRHペプチド神経系の生物機能に関する統合的研究
Project/Area Number |
20247005
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岡 良隆 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (70143360)
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Keywords | 神経科学 / 生理学 / 脳・神経 / 動物 / 生理活性 |
Research Abstract |
申請者らは、生殖調節に強く関与している脳内のGnRH1ニューロンに焦点を当て、メダカを用いて研究を行った。生殖可能な時期のメダカは、条件さえ整えば毎日産卵を繰り返し1日という短い生殖周期を示すため、生殖周期に応じた神経活動変化等の解析が容易である。 申請者らは脳内のGnRH1ニューロン特異的にGFPを発現するような遺伝子組換メダカを作り、ほぼ丸ごとの脳をin vitroの状態に保ち、顕微鏡下で同定した1つのGFP標識GnRH1ニューロンからの自発的な神経活動を記録することに世界で初めて成功した。メダカのGnRH1ニューロンは一見不規則に見える発火パターンを示したが、一日の様々な時間帯でメダカから脳を取り出して神経活動を調べると、GnRH1ニューロンの発火活動は午前中に低く保たれており、夕方から夜にかけて発火頻度が上昇するという日内変動を示すことがわかった。次にGnRH1ニューロンにより制御される脳下垂体の生殖腺刺激ホルモン(LH・FSH)の遺伝子発現を調べたところ、こちらも発現量に日内変動を示すことが明らかになった。 これらの結果より、メダカでは1)何らかの神経入力を受けてGnRH1ニューロンの発火活動が一日の夕方の時間帯に高まり、これによりGnRH1ニューロンからGnRHペプチドが放出されて脳下垂体に作用する、2)GnRHが脳下垂体に作用してLH放出を引き起こす、3)GnRHは数時間後にLHの遺伝子発現を高め、脳下垂体細胞にLHを作らせる。こうした過程によりGnRHペプチドは、GnRH1ニューロンの発火頻度が高まる夕方の時間帯に大量に放出されて脳下垂体に作用し、素早くLHを大量放出させることにより排卵を引き起こす。同時に、GnRHは数時間後にLHの遺伝子発現を上昇させるように作用して翌日の大量放出のためのストックとなるLHを合成する、という機構が強く示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、まずGnRH1ニューロンの自発活動の解析に関する大きな成果を上げることができた。これに関してはプレス発表も行い、また、各種国際会議や国内学会等を通じて国内外に幅広く情報を発信することができた。これに加え、GnRH3ニューロンに関しても、抑制性神経修飾物質としてのペプチドRFRPを発見して、国内外の学会発表ないし論文発表を行った。RFRPに関しては、GnRH1ニューロンを含めた生殖調節神経回路における調節機能の可能性も出てきたので、RFRP遺伝子発現ニューロンをGFP標識したトランスジェニックメダカの作成にも着手し、年度内に既にその系統確立に成功している。また、GnRH1ニューロン同様の方法を用いてRFRPニューロンの電気生理学的解析も開始しており、既にその研究成果も出つつある。さらに、平成24年度に開始した挑戦的萌芽研究のプロジェクトの一環として始めた新たな手法を用いた遺伝子ノックアウトメダカの作成が軌道に乗り始めた。これを本研究プロジェクトにも利用することが可能になりつつある。 以上のように、研究開始当初に計画した実験計画に則って研究成果が順調に出せているだけでなく、当初予定しなかったような新たな研究の展開もあり、本研究の現在までの達成度は大変高いと自己評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
生殖の中枢制御に直接関わる視索前野GnRH1ニューロンに関しては、トランスジェニックメダカを用いて既に毎朝規則的に起こる排卵と関連のある、GnRH1ニューロン電気活動の周期的変動を全脳in vitro標本からの電気記録により発見している。これをさらに一歩進めて、GnRH1ニューロンの分泌活動の日周変化を長時間安定して自由行動下の動物でイクオリンの生物発光信号の変化としてモニターできる、イクオリン標識GnRH1ニューロントランスジェニックメダカを作製し、繁殖状態・非繁殖状態など様々な生理状態における自由行動下の動物のGnRHニューロン発火活動の日周変動を解析する。さらに、この方法をGnRH2,3ニューロンにも応用し、神経修飾作用のあるGnRH2,3 ニューロンの行動に及ぼす影響を明らかにする事により、多機能性GnRH神経系(GnRH1~3ニューロン)全てのニューロンの機能の統合的解明を目指す。 GnRH3ニューロンは嗅覚系の中枢である嗅球の神経回路および視覚系の中枢である視蓋に密な軸索投射を示すことがわかっている。このことに注目して、GnRH3ニューロンのもつ神経修飾作用を具体的に解析するために、キンギョを用いて嗅球および視蓋の神経回路におけるシナプス伝達に対してGnRHの示す神経修飾作用を電気生理学的に解析する。さらに、トランスジェニックメダカの作成できるメダカを用いてTN-GnRH3ニューロン特異的にチャネルロドプシンやハロロドプシンを発現させて、光刺激によりTN-GnRH3ニューロンの活動を促進もしくは抑制し、そのときに嗅球や視蓋において生じる神経修飾現象を生理学的に解析する。
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Research Products
(59 results)
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[Journal Article] Time-of-day dependent changes in GnRH1 neuronal activities and gonadotropin mRNA expression in a daily spawning fish, medaka2012
Author(s)
Karigo, T., Kanda, S., Abe, H., Okubo, K., and Oka, Y.
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Journal Title
Endocrinology
Volume: 153
Pages: 3394-3404
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Female-specific target sites for both estrogen and androgen in the teleost brain2012
Author(s)
Hiraki, T., Takeuchi, A., Tsumaki, T., Zempo, B., Kanda, S., Oka, Y., Nagahama, Y., and Okubo, K.
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Journal Title
Proceedings of the Royal Society. B, Biological sciences
Volume: 279
Pages: 5014-5023
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Sex differences in aromatase gene expression in the medaka brain.2011
Author(s)
Okubo, K., Takeuchi, A., Chaube, R., Paul-Prasanth, B., Kanda, S., Oka, Y., and Nagahama, Y.
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Journal Title
Journal of Neuroendocrinology
Volume: 23
Pages: 412-423
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Anatomical relations between neuropeptide Y, galanin, and gonadotropin-releasing hormone in the brain of chondrostean, the Siberian sturgeon Acipenser baeri.2011
Author(s)
Amiya, N., Amano, M., Tabuchi, A., and Oka, Y.
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Journal Title
Neuroscience Letters
Volume: 503
Pages: 87-92
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Central distribution of kiss2 neurons and peri-pubertal changes in their expression in the brain of the male and female red seabream Pagrus major.2011
Author(s)
Shimizu, Y., Tomikawa, J., Hirano, K., Nanikawa, Y., Akazome, Y., Kanda, S., Kazeto, Y., Okuzawa, K., Uenoyama, Y., Ohkura, S., Tsukamura, H., Maeda, K.-I., Gen, K., Oka, Y., and
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Journal Title
General and Comparative Endocrinology
Volume: 175
Pages: 432-442
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] Embryonic Expression and Function of Kisspeptins and their Receptors in a Teleost Fish, medaka2012
Author(s)
Okubo, K., Hodne, K., Kanda, S., Shimada, H., Oka, Y., Weltzien, F.A.
Organizer
The 2nd World Conference on Kisspeptin Signaling in the Brain
Place of Presentation
The University of Tokyo, Tokyo
Year and Date
20121106-20121109
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[Presentation] Electrophysiological and Morphological Analysis of Kiss1 Neurons in Trasgenic Medaka, Oryzias latipes2012
Author(s)
Shimada, H., Kanda, S., Akazome, Y., Abe, H., Okubo, K., Oka, Y.
Organizer
The 2nd World Conference on Kisspeptin Signaling in the Brain
Place of Presentation
The University of Tokyo, Tokyo
Year and Date
20121106-20121109
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[Presentation] Effects of Kisspeptins on LH Secretion and GnRH1 Neuronal Activities in Goldfish and Medaka.2012
Author(s)
Karigo, T., Uenoyama, Y., Oishi, S., Fujii, N., Mitani, Y., Kanda, S., Oka, Y.
Organizer
The 2nd World Conference on Kisspeptin Signaling in the Brain
Place of Presentation
The University of Tokyo, Tokyo
Year and Date
20121106-20121109
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[Presentation] Galanin receptor signaling modulate kisspeptin-induced luteinizing hormone secretion in male rats2011
Author(s)
Ieda N. , Uenoyama Y. , Yamamoto E. , Oka Y. , Sugihara M. , Ono Y. , Suwa M. , Ishii H. , Kato M. , Yin C. , Sakuma Y. , Maeda K.-I. , Tsukamura H.
Organizer
The Second World Congress on Reproductive Biology
Place of Presentation
Cairns, Australia
Year and Date
20111009-20111012
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