Research Abstract |
リボソームは翻訳の基幹装置であり, その生合成機構の解明は, 生命現象解明の中心的課題である. 本研究では, rRNAの成熟過程を, アセチル基転移酵素とガイドsnoRNAの複合体解析を通して解明することを研究目的としている. 連携研究者の鈴木勉(東大・院工)は, 最近, 真核生物においてrRNAのHelix45のアセチル化に関与する必須遺伝子を同定したが, この遺伝子は我々が構造解析したヘリカーゼ機能を持つtRNAアセチル基転移酵素TmcAのホモログをコードしている. 我々はこれらの事実から, このTmcAホモログは備え持つヘリケースドメインによりHelix45の2次構造を解きつつ, U13をガイドとしてpre-18SrRNAに結合し, アセチル化を施しているという新しい概念を持つに至った. 本申請では, このTmcAホモログ(RAT: RNA AcetylTransferase)がU13をガイドとしてpre-18SrRNAを認識し, その2次構造を解き, アセチル化を行う分子機構を解明し, 次いで, そのアセチル化を認識したrRNA切断酵素がpre-18SrRNAをプロセシングするまでの分子機構を解明する. 本年度は, 真核生物由来TmcAの発現・精製系の確立を目指して研究を進めた. そのためマウス由来のTmcAのホモログ(mTmcA)をコードする遺伝子を含むベクターを購入し, PCRにより増幅した. mTmcAは115kDaを超えるタンパク質であり, 可溶化, 精製が困難であるため, GSTとの融合タンパク質として発現させる系を構築し, QuikChangeキットを用いて, GSTとmTmcAの間にHis-tagを挿入した. mTmcAの発現を確認したところ, 不溶性画分に発現が確認された. 次いで酵母Pchiaを用いたmTmcAの発現系を構築し, アフィニティークロマトグラフィーにより, GST融合しているmTmcAを調製することができた. 精製過程を最適化することにより, 安定な分子を大量に調製することが可能となった. さらに, 精製されたmTmcAのATPase活性を確認した。一方, バイオインフォマティクスを用いてmTmcAと相互作用する分子群を探索した結果, mTmcAはリボソームrRNA18Sの生合成に関連する因子UTP7, UTP22, KRR1, ENP1, ENP2, NOP4と相互作用し, rRNA18Sの生合成に関与する可能性を示唆した.
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