Research Abstract |
本研究は,ヒドロゲナーゼ成熟化因子Hypタンパク質の結晶構造解析を行い,その成熟化過程を構造生物学的に解明することを目的としている.本年度は,HypC-HypD複合体の構造解析を行い,2.6Å分解能での結晶構造を決定した.HypC-HypD複合体において,HypCの保存されたβバレルドメインがHypDの分子中心に結合し,両者の保存モチーフが近接していることが明らかになり,推定した反応機構を支持する結果が得られた.HypC-HypDの相互作用部位は,主に保存された疎水的性残基間の相互作用で形成されていた.また,HypC, HypDおよびHypEタンパク質間の溶液中での複合体形成についても検討した.HypD-HypEあるいはHypC-HypE間での複合体形成は確認できなかったが,HypC-HypD複合体とHypEとは弱い相互作用を確認することができた.そこで,HypC, HypDおよびHypEそれぞれの精製サンプルを等量混合して複合体を調製したところ,X線回折実験に適する三者複合体の結晶が得られた.放射光による回折実験の結果,4.1Å分解能の回折データ収集に成功し,現在,分解能向上のための結晶化条件の改善,分子置換法による構造解析を行っている.前年度構想解析に成功したHypAについては,モノマー状態の構造を2.3Å分解能で,ダイマー状態の構造を3.3Å分解能で,それぞれ精密化を完了した.HypFについては,発現条件および精製方法の改善によって結晶化に十分な量のタンパク質試料調製に成功し,複数の条件において予備的な結晶が得られた.放射光による回折実験の結果,6Å分解能程度の回折点を確認することができ,現在,結晶化条件の改善を進めている.
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