Research Abstract |
本年度は,ラッカセイによる有機態リンの吸収機序の解析を継続するとともに,Sesbaniaのリン回収能の評価と実際に緑肥としてすき込んだ際の後作物へのリンの供給力を定量した.また,土壌中に蓄積したフィチンの溶解に緑肥すき込みが及ぼす影響を調査し,あわせてフィチン分解微生物の単離を試み,これらをもって最終年度のとりまとめとした.先ず,有機物含量の高い黒ボク土と有機物含量の低い鹿沼土に,ラッカセイ6品種とダイズ1品種を移植してリン施肥反応を調査したころ,鹿沼土でのリン施肥反応はダイズで大きく,ラッカセイで小さく,ラッカセイの方が無機態難溶性リン利用能が高いことが示唆された.黒ボク土での施肥反応はラッカセイ品種間で異なり,サウスイーストランナーとバレンシアが有機態リン利用能が優れる可能性を認めた.また,対照区(リン無施肥)、過リン酸石灰区、フィチン酸カルシウム区を設けてバーミキュライトでラッカセイとトウモロコシの幼植物を栽培したところ,ラッカセイではフィチンは過リン酸肥料と同様に利用される可能性が示された.なお,根をトルイジンブルー染色した結果からは,フィチンの形態で根が吸収しているという証拠は認められなかった.Sesbaniaの緑肥としてのリン供給能は種とすき込み時期によって異なり,西南暖地の水田で畑への転換後に地力が低下した圃場では,乾物生産量や着莢時期などの特性を考慮すると,S.rostrataは8月下旬から9月上旬にかけて,S.cannabinaは8月下旬から9月中旬にかけてすき込むことで早期に地力増強が可能であることが示された.有機態リンが蓄積している圃場ではC/P比か高い茎部が多い資材をすき込むととで,可給態リンを増加させる可能性が推察された.数種マメ科作物の根圏微生物のフィチン溶解活性を調査したところ,高い活性を示す2系統を単離することができた.
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