Research Abstract |
近年,老朽開水路のパイプライン化が急増している中で,コスト縮減や環境負荷低減に起因して管厚の薄肉化が進展してきている.しかしながら,現行の構造設計は,"構造解"を基に設計されているために,極度の薄肉化によるパイプの座屈挙動などを予測することができず,破壊の危険性を含んだ設計手法であると言わざるを得ない.よって,当研究では,これらの現行設計の適用限界を明らかにし,耐震性向上や限界状態を考慮した,新たな大口径パイプラインの設計法の提案ならびに検証を行うものである. 今年度は,薄肉パイプの静的埋設実験に先がけて,同一曲げ剛性を有する管厚の異なる供試パイプの製作・検証を行った.製作した供試パイプはパイプ内面からの観察等を考慮して口径400mmとした.材質は鋼管,塩ビ管,ポリエチレン管の3種類とした.また,摺動型の100mm精密変位計と回転角度計を連動させ,動的ローガーを組み合わせた微小変形挙動観測システムを構築した.上記システム開発後,2点載荷実験ならびに中型土槽内埋設実験を遂行した。埋設条件は,密詰めならびに緩詰地盤の2種類で実施した.なお,実験に使用した鋼板製土槽は,幅2m,奥行き1m.,深さ1.4mの中型土槽である. また,供試パイプの変形挙動を正確に捉えるため,パイプ内外面に計240枚のひずみゲージを貼付し,発生ひずみを計測した.その結果以下のことが明らかになった.(1)パイプの変形に対して管厚の違いが与える影響は少ない.(2)管厚が薄く,弾性係数の高いパイプにおいて,より大きく不均一な軸応力が生じ,座屈が発生する可能性が高い.(3)パイプの剛性が高いほど,地盤内応力集中が生じて,より大きな軸応力が発生する. 上記の挙動は,現行の設計では考慮されていない点であり,きわめてパイプラインの安全性に影響のある挙動である.
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