2010 Fiscal Year Annual Research Report
ステロイド/成長因子システムの中枢作用機構に関する研究
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20248030
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
西原 真杉 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (90145673)
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Keywords | 脳・神経 / ステロイドホルモン / 成長因子 / 組織幹細胞 / 神経新生 / 神経変性 / 性分化 |
Research Abstract |
我々は、ステロイドのある種の中枢作用は脳内成長因子の遺伝子発現を介することを見出した。本研究は、ステロイドと成長因子の共役による神経細胞の分化制御機構等の神経生物学的基盤を確立することを目的としたものである。我々は、脳の性分化関連遺伝子としてプログラニュリン(PGRN)遺伝子を同定するとともに、本遺伝子が成熟動物の海馬における神経新生にも関与していることを明らかにしてきた。本年度には、まず走行運動により海馬におけるPGRN発現が上昇すること、PGRNノックアウト(KO)マウスでは野生型マウスで見られる走行運動による海馬歯状回の神経新生の促進が起こらないことを見出した。PGRNの脳内分を調べると、大脳皮質、海馬、扁桃体、視床下部、小脳などで特に強く発現していることが分かった。また、その発現は加齢依存的に減少することが明らかとなり、ステロイドの低下によるPGRNの低下が老齢期での神経保護作用の低下の一因となっていることが示唆された。また、PGRN KOマウス老齢個体では神経細胞にユビキチン陽性のリポフスチンの沈着やグリオーシスが観察された。これらの知見は、ヒトの前頭側頭葉変性症の原因の一つがPGRN遺伝子の変異によるとの報告とも一致するものであり、PGRN KOマウスが神経変性疾患の発症機序を研究する優れたモデルマウスとなることを示している。また、培養神経前駆細胞を用いてPGRNの作用機序についても検討した結果、PI3キナーゼを介してGSK3βのリン酸化(不活性化)が起こることを見出し、PGRNはGSK3βの不活性化を介して神経細胞における作用を発揮していることが示唆された。
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